これぞ神ってる!! 広島が日本シリーズ史上、過去に類を見ない決勝点をもぎとった。「SMBC 日本シリーズ2016」第2戦。同点の6回に田中広輔内野手(27)の本塁生還プレーをめぐり、リプレー検証が行われ、アウトの判定がセーフに覆って勝ち越した。本塁クロスプレーのリプレーによる検証が日本シリーズで行われたのは初めてで、勢いに乗った鯉は一気に4得点。球団初のシリーズ2戦2勝発進を飾った。

 32年ぶり日本一を決めれば「あれも神っていたな」と、振り返るシーンになるはずだ。

 同点の6回。無死二塁から菊池がバスターで左前打を放つ。田中のスタートは遅れた。だが河田三塁ベースコーチは敢然と手を回した。走者・田中が砂煙を立てて滑り込み、本塁へ左手を伸ばす。日本ハム西川も本塁へ懸命の送球。微妙なクロスプレーとなった。

 白井球審の判定は「アウト」。すかさず一塁側ベンチから真っ赤なベンチコートを着た緒方監督が飛び出す。ビデオでのリプレー検証を要求。審判団が集まって協議し、午後8時42分からビデオを見た。3分後に出た結果を受け、丹波責任審判は「田中選手の手が先に本塁に触れていますので…」と場内放送。「得点として無死走者二塁で試合を再開」と言う前に3万638人で埋まったマツダスタジアムは大歓声に包まれた。シリーズ史上、初めて本塁でのリプレー検証によって決勝点が入った瞬間だ。

 河田コーチ 正直、あんなにいい送球が返ってくるとは思わなかった。焦ったけれど田中が低い、いい姿勢で滑り込んでくれたね。

 田中 河田さんに任せようと思って一生懸命走りました。手の方が早かったかなと思ったけど微妙だったし、審判がアウトと言うならアウトかなと思っていた。練習してきたことがやれました。

 歴史的生還で流れは一気に広島に傾いた。1つのスキをつき、突破口にする。今季、何度も見せてきた広島の攻撃を、この大事な局面で展開した。

 緒方監督 (田中)広輔がうまいことタッチをかいくぐって。ベンチから見ていると追いタッチになっていた。今年はそういうルールでやっているし、検証を求めた結果、セーフになってよかった。

 本拠地で2連勝。32年ぶり日本一へ選手権の流れを引き寄せた。このまま一気に北の大地で決めるのか。期待を背に受け、指揮官以下、広島ナインはきょう24日、チャーター機で敵地・札幌ドームに乗り込む。【高原寿夫】

 ◆日本シリーズのリプレー検証 昨年第5戦の4回1死三塁、李大浩(ソフトバンク)の飛球は左翼ポール際へ。線審は本塁打と判定したが、ヤクルト真中監督の抗議を受け、審判団が日本シリーズで初のリプレー検証。当初の判定通り本塁打となった。本塁でのプレーにリプレー検証の適用は今季から。当初の判定がリプレー検証で覆ったのは、今回が日本シリーズで初めて。