最後まで、楽天一筋を貫いた。仙台に冬の便りが届き始めた11月中旬。国内最後の楽天創設時メンバーだった牧田明久外野手(34)が、ユニホームを脱ぐ決断を下した。

 10月23日に球団から来季の構想外を伝えられ、熟慮の末に現役引退の道を選んだ。「僕はこの球団が好きなんです。最後まで楽天で終わりたかったし、家族も仙台の街を気に入っている。どうしても、他のチームでプレーすることは考えられませんでした」。心の奥底の声に従った。

 16年は16試合という限られた出場数ながら、打率3割5分5厘の成績を残した。他球団でプレーする選択肢もあった。それでも、自分を飛躍させてくれた球団への思いが挑戦を思いとどまらせた。「楽天1年目の05年は本当に何もないところからのスタートでした。それが日本一まで経験させてもらい、球場も大きくなって、こんなにファンも増えた」。体が動かなくなるまで選手を全うしたい気持ちはあった。その一方で、体が動くうちに球団に何かを還元したいとも考えていた。そんな中に、野球少年を教えるジュニアコーチ職のオファーを受けた。

 自分を支えてくれた2人の娘と妻に、恩返しがしたかった。「他球団で挑戦しようと考えたこともありますけど、やはり僕は家族のそばにいたかった」。遠征で家を空ける事の多かった現役時代、心の支えは娘2人からの手紙や電話だった。穏やかな人柄と優しさで後輩から慕われた牧田らしく、周囲への感謝が現役を引退する決め手となった。

 楽天創設時メンバーであると同時に、現役では残り少ない元近鉄戦士でもあった。「こんなに長くできるとは思っていなかった。近鉄と楽天では梨田監督に野村監督、星野監督と、名将の下で学ばせていただきました。これからの人生に、しっかり生かしていきたいです」。16年間に及んだ選手生活で得たものを、第2の野球人生で伝えていく。【16年楽天担当=松本岳志】