楽天松井裕樹投手(21)が“大谷封じ”で首位固めだ。同点の9回から登板。2イニング目の延長10回2死一、二塁から、ネクストバッターズサークルに大谷が登場したが、重圧をはねのけ、代打矢野を空振り三振に仕留めた。サヨナラ負けのピンチをしのぎ、今季3勝目をマーク。2位ソフトバンクとのゲーム差を1・5に広げた。

 球場が異様な雰囲気に包まれた。同点で迎えた延長10回2死一、二塁。松井裕は、代打・矢野を迎えた。その直後、歓声が最高潮に達した。松井裕は視線を正面から右斜め、ネクストバッターズサークルに移した。「声援で分かりました。翔平さんが出てくるとすごい雰囲気になる。回したくないと思った」。ゆっくりと準備を進める大谷を一瞬視界に捉え、ここで決めると覚悟を決めた。

 2球で簡単に追い込んだ。カウント2-2としてからの5球目。捕手・嶋からのサインにうなずいた。「相手はチェンジアップを狙っていると思った」と裏をかき、外角いっぱいへ147キロ直球で空振り三振に斬った。三塁側ベンチに戻る大谷とともに、球場はため息に包まれた。それをあざ笑うかのように松井裕は力強くガッツポーズを決め、一塁側ベンチへ小走りで戻った。

 勝負の分かれ目だと、認識していた。前日23日、楽天のウオーミングアップ中に大谷がフリー打撃を始めた。柵越えを連発する姿に、両軍ナインやスタンドのファンがくぎ付けになった。「えぐすぎる」と声を上げる選手もいた。すべてをのみ込んでしまう大谷という存在を断ちたかった。梨田監督も「徳俵で踏ん張ったという感じだね」と緊張感いっぱいの試合を振り返った。

 今季30試合に登板し、わずか1失点、防御率は0・28と安定感が際立つ。それでも満足することはない。「サブ(福山)さんが0・00なのでそこに負けないようにしたいと思っている」。今季初セーブを挙げた福山は27試合に登板し防御率0・00。同僚へのライバル心が相乗効果を生んでいる。チームは首位をキープしたが、好調だった打線の調子がやや落ちてきた。「開幕直後は野手のみなさんに助けられた。暑くなってきたので、投手陣がしっかり踏ん張っていきたい」。21歳で守護神を務める男の言葉は頼もしかった。【栗田尚樹】