絶体絶命のピンチで仕事を果たすからこそ、スター選手と呼ばれる。出番は、2点ビハインドの9回だった。代打藤田の打席で振り逃げ暴投で1点差とし、なお2死一、二塁。松井稼は代打で登場した。「みんながつないでくれたので。自分もつなぐ意識で」。オリックスの守護神・平野の外角148キロ直球を左前へはじき返し、土壇場で試合を振り出しに戻した。梨田監督も「なんと言っても、稼頭央だね」と最敬礼するほどの存在感だった。

 前カードの日本ハム戦から試合前に遊撃のシートノックに入るなど、準備を怠らない。若手の茂木が故障で離脱し、遊撃手が手薄な中、打に守に、表に陰に支えている。勝利はならなかった。ただし、勝ちに等しい引き分けといっていい。「守備の方が緊張した」と笑う横顔は、年齢を感じさせないほど、生き生きとしていた。【栗田尚樹】