巨人菅野に投げ勝った! 広島薮田和樹投手(25)が4安打完封で11勝目を挙げた。7月の球宴で菅野からもらった助言を胸に、走者を出しながらも冷静。1アウトずつを積み重ねた。しびれる1-0の勝利。今季チーム初完封で、3連敗中だったチームを救った。緒方監督も最敬礼だ。

 9回のマウンドに立つことを意味する、8回の打席。大歓声を向けられ、薮田は思った。「新井さんはこんな感じかな」。そして9回。マウンドにゆっくりと向かう途中。向けられた「薮田コール」に、思った。「黒田さんみたいだな」。1つずつ積み重ねた27個のアウト。プロ初完封は、冷静さがもたらした。

 相手は巨人菅野。1点の持つ意味を理解しながらも「余計なことは考えず、1イニングずつと思って投げた」。最速153キロの直球に、カットボール、亜細亜大伝統のフォークに近いツーシームが効いた。今春のキャンプから「これ以上(制球が)荒れたところは見せられない。とにかくゾーンに」と開き直って手にした制球力も光った。加えて脳裏には相手の菅野からの言葉が焼き付いていた。

 「どうやったら完封できますかね」。初めて出場した球宴で、薮田は岡田と並んでベンチに座った。隣の菅野に、勇気を出して聞いた。答えはシンプルだった。「例えば先頭に四球を出しても、次の3人を抑えればいい。『やってしまった』じゃなくて『もし四球になっても』という考えが大事」。金言は直接対決で生きた。4四死球など感覚の波があったなかでも、後続を冷静に打ち取れた。

 8回を投げ終えた後には畝投手コーチに「行ってもいいですか」と続投を志願。中継ぎ陣の登板が立て込み「なんとか完投したかった」と黒田さんさながらのおとこ気を見せた。「イニングの短い小学生以来ですかね」と笑う完投完封でリーグトップの12勝菅野に1勝差と迫った。今季チーム初の完封に緒方監督も「薮田の投球に尽きる。本当に素晴らしい投球。中継ぎ陣にもありがたい投球だった」と絶賛。チームの連敗を3で止めた薮田には風格も漂い始めた。【池本泰尚】