楽天則本昂大投手(26)が、9回を4安打に封じ、5月10日ロッテ戦(Koboパーク宮城)以来、今季2度目の完封勝利を挙げた。前回登板の2日西武戦(メットライフドーム)では、力みから6回6失点と崩れた。その反省を生かし、走者を背負っても常にリラックスした表情を心がけ、今季11勝目をマークした。ソフトバンクが勝利したため、首位再浮上はならなかったが、追い上げムードは高まるばかりだ。

 穏やかだ。則本の眉間には、しわ1つない。1点リードの4回。暴投、四死球が絡み1死満塁のピンチを背負ったが、表情は変わらない。中島をスライダーで三併殺に斬り、無失点で切り抜けた。2点リードの5回2死二塁でも四球を与えたが、動じない。スーッと深呼吸をし、次打者・吉田正を高めスライダーで仕留めた。ガッツポーズを決めた横顔は、柔らかかった。「いい意味で勝ちたい気持ちに入りすぎず、どこか自分を第三者的に見られていた」と俯瞰(ふかん)で心を整えた。

 鬼気迫る表情、雄たけびを上げるいつもの顔は、そこになかった。回を追っても、驚くほどに冷静だった。9回に入っても150キロを連発するほど、余裕があった全117球だった。梨田監督も「押すところは押して、引くところは引く。首の振り方も上品。力が抜けていた」とうなずき、今季2度目の完封勝利に満足げだった。

 前回対戦から学んだ。2日西武戦は、6回を今季ワーストタイの6失点だった。与田投手コーチから「腕がちぎれるんじゃないかと思うほど、力が入りすぎていた」と心配されるほどだった。四死球と暴投で3失点したあの日から一変、この日は四死球を与えようと、暴投を記録しても、リラックスを貫いた。則本も「前回があっての今日。あらためて無駄な日はないと。そう思いました」とホッとした表情を浮かべた。

 このまま顔を上げ、走り続けていく。勝利数では、リーグ1位のソフトバンク東浜の12勝に次ぎ、2位タイの11勝目をマークした。これで昨年の白星に並んだが、ルーキーイヤーの13年には15勝を挙げている。ここで満足しない。もっと高みを目指す。「次もチームが勝つことだけを考えて投げたい」。もちろん、首位ソフトバンクを引きずり降ろすためにも-。心は熱く投球は冷静に。エースが、新たな一面をのぞかせた。【栗田尚樹】