超満員のハマスタが福留劇場になった。試合を決めたのは不惑の阪神キャプテンのメモリアル弾だった。1-1で迎えた延長10回、1死走者なしの場面で、DeNA砂田の低め144キロを振り抜いた。

 「芯に当たってくれたんでよかった。打った瞬間、(手応えが)良かったんで届いてくれと」

 逆方向へと伸びたライナー気味の打球は、そのまま左翼ポール際にズドン。今季12号の決勝アーチは史上61人目となる通算250号だった。花束を受け取ると、黄色く染まった左翼席の声援に応えた。

 試合を振り出しに戻したのも福留だった。0-1の8回、無死二塁の場面。追い込まれながらも、パットンの変化球を捉えた。打球が投手の足に当たる強襲の内野安打。嫌な流れを断ちきる執念の同点打だった。この日、開催されたセ、パ5試合が完封ゲーム。全6試合なら史上初の珍記録だったが、ベテランが阻止してみせた。

 守備でも魅せた。3回だ。2死一塁から2番田中浩の打球が右中間を襲う。長打か…。そこに右翼福留が猛然と突っ込みダイビングキャッチ。クルクルと転がって起き上がると、グラブには確かにボールが収まっていた。

 福留が本塁打を打てば今季は12戦12勝と不敗神話を継続させた。金本監督は「ああいうところで打って、決めてくれるのが、福留ですから。今後もたくさん、こういう場面で打ってほしい」と絶賛した。大黒柱のメッセンジャーが右足骨折で離脱。チームのピンチでしっかりと仕事をする。さすが福留だ。【桝井聡】

 ▼通算250本塁打=福留(阪神) 12日のDeNA16回戦(横浜)の10回、砂田から今季12号を放って達成。プロ野球61人目。初本塁打は中日時代の99年4月16日巨人1回戦(東京ドーム)でガルベスから。40歳3カ月で達成は、今年の5月25日井口(ロッテ)42歳5カ月に次いで2番目の年長記録。