どんな状況になっても虎のキャプテンはチームメートへの目配りと気遣いを忘れない。前日16日には82日ぶりに1軍のマウンドに登板した藤浪が序盤から乱調。4回、菊池に死球を与えて両軍がにらみ合いになった。その瞬間、福留は右翼からマウンドまで直行。伏し目がちの藤浪に近づきカツを入れた。

 お立ち台から降りて報道陣に囲まれた福留は「俊介にいい誕生日を迎えてもらおうと思ってね」と笑った。遠征先でも食事をともにするなどかわいがっている後輩の30歳の誕生日を祝福した。9回福留が決勝犠飛を放つ直前に左前打でお膳立てした北條を見つけると「まあ、今日は北條のおかげじゃないかな」と言ってまた笑った。

 絶対に負けられない首位広島との3連戦だったが、初戦から2連敗。嫌なムードが流れた。それを断ち切ったのがキャプテンの気迫だった。金本監督は「あの場面になると、ほぼ決めてくれるだろうな、と確信がありました」と信頼を口にした。首位広島とのゲーム差は9・5。現実は厳しいが、ファイティングポーズを下ろすわけにはいかない。福留がそれを示した。【桝井聡】