トリ、やったな! 阪神金本知憲監督(49)も2000安打を達成した鳥谷を祝福した。主力として04年の鳥谷入団1年目から成長を見守り、05年はレギュラー同士でリーグ優勝を喜び合い、昨年監督となってからも温かく叱咤(しった)激励してきた。「次は2500。必ず打てよ」。達成後耳元でささやいた言葉が、元祖鉄人から新鉄人へのエールだ。

 金本監督は右手をスッと差し出した。鳥谷と握手を交わす。顔を近づけ、耳元でささやいた。「次は2500。必ず打てよ」。2回に偉業を達成した後、ベンチ前で出迎えた。祝福の代わりに、次なる目標をメッセージとして送った。反撃のタイムリーから、チームは逆転勝ち。「2000本を打った日に勝てたというのが、今日は一番うれしい」。指揮官はそう言って、笑った。

 就任直後、スローガンである「超変革」を真っ先に求めたのが、鳥谷だった。「お前が変わらないとチームは変わらない。数字も実績、年齢、年数にしても、物足りなさすぎる」。プロ1年目からチームメートとして、間近で見てきた。本来持つ能力を考えれば、もっとできる。指揮官はそう信じた。しかし思わぬ打撃不振で、チームもBクラスと低迷。今季は「圧倒的な力を見せない限り、同じぐらいだったら若い選手を使う」と本人に伝え、特別扱いせずに若手と競わせた。今春キャンプ終了時点で北條を遊撃に選び、鳥谷は三塁に転向させた。そんな逆境を乗り越えての2000安打達成。金本監督は言った。「年齢的にも去年35歳で、ドーンと成績がダウンすれば、次の年が勝負になる。その勝負に見事に勝った」。

 若手育成に力を注ぐが、主力の活躍があってこそ-。そんな考えを指揮官は持つ。この日のように、ベテランと若手がかみ合っての勝利は今季多く見られる。「僕の中では打線の反発力とか選手の姿を見て、(広島に)負けていうのもおかしいけど、強くなった」。躍進するチームの中心には、鳥谷がいる。【田口真一郎】