オリックス・マレーロは両足でジャンプし、しっかりと本塁を踏みしめた。6回2死一塁。ロッテ成田からはじき返した直球が、低い弾道を描いて左翼席へ刺さった。「今日はいつもより気を付けました」。無邪気に笑った。記念すべきプロ野球通算10万号は幻じゃなかった。

 衝撃のデビュー戦が脳裏をよぎった。6月に途中加入し、同9日、5回に逆転2ランを放った…かに見えたが、本塁空過の判定。来日初アーチをふいにしていた。「踏み忘れたことで、ファンの方に名前を覚えてもらったのもある。それもあっての10万本。驚いている」と不思議な巡り合わせを喜んだ。あの時ホームを踏んでいれば、この記録はなかった。

 狙っていた。T-岡田が直前の5回に9万9999号を打って王手がかかった。ベンチからは「あと1本」の声が。「自分が打つ」と宣言した。有言実行のメモリアル弾。この日プロ初完封を果たした吉田一も「本当に打った。びっくり」と目を丸くした。

 自身今季19号となる2ランは、チーム4連敗のストップと快勝に貢献した。「日本プロ野球の長い歴史に、名前が刻まれたことをうれしく思う」。災い転じて、大きな福が待っていた。【鎌田良美】