自分に勝った。西武菊池雄星投手(26)が8回6安打3失点(自責1)の力投で2位確定まで“マジック1”とした。制球に苦しみながらも我慢の投球。16安打で10得点を奪った打線の援護につなげ、ハーラートップタイの16勝目を挙げた。勝利数、防御率(1・97)、奪三振(217)の投手3部門で再びリーグトップ。昨年から続く自身の楽天戦連勝も11に伸ばし、CSでの対決に向け、大きな弾みをつけた。
拳を振り上げ、力いっぱいグラブをたたいた。2点リードの8回無死満塁。菊池は気持ちだけで真っ向勝負を挑んだ。連続四球から招いたピンチ。「(制球が)どうしようもないときは気合だけ。とにかくミット目がけて投げました」。2者連続三振を決め、最後は嶋を中飛に打ち取った。「いい日ばかりじゃない。こういう試合を勝てたのが、今年1年の成長だと思う」とうなずいた。
絶体絶命の局面を救ったのは、生命線の内角直球だった。三振を奪った代打の中川、足立、そして嶋は150キロ台の真っすぐで追い込んで仕留めた。「7回まで決まらなかったインコースが最後の3人に限って決まってくれた」と苦笑いを浮かべたが、ここぞで武器をよみがえらせたのは、日ごろからの鍛錬だった。
菊池 インコースはごまかせない。いいフォームじゃないと投げられない。手先でどうにかしようとしても、絶対にしっかりした球はいかない。
気合だけでは決してない、染み込んだ技術と経験が確かな土台となっていた。
5回頃から両足のふくらはぎがつっていた。それでも「前回(9月21日ロッテ戦)は体調不良で降りていた。またこんなので降りたくなかった」。今季の飛躍を支えたのは耐える力。「今年は調子が悪い時も、ここを修正すればというチェックポイントが分かってきた」という。理想のフォーム作りに積み重ねてきた膨大な時間が、窮地をしのぎきれる精神面の成長につながった。「フォームを考える時間も長かった。その分(投球の)引き出しも増えたし、その経験が生きていると思う」と力を込めた。
背番号と同じ16勝目を挙げ、目標の180投球回も到達。1年間ローテーションも守りきった。それでも言う。「エースはどんなものなのか、まだ分からないですね。でも優勝させることが本当の投手だとは思っています」。次回登板は楽天とのCSファーストステージ初戦が濃厚。己のエース像を見つけるため、チームを勝たせる道を進み続ける。【佐竹実】
▼西武が楽天に勝ち、早ければ今日4日にも13年以来4年ぶりのリーグ2位が確定。4日(西武は試合なし)に決まるケースは楽天がロッテ戦に●か△。