悲しみを乗り越え、大成を誓った。日本ハムのドラフト1位の清宮幸太郎内野手(18=早実)が8日、千葉・鎌ケ谷市の勇翔寮に入寮した。年末年始には身内の不幸が相次ぎ、さらに父克幸氏と親交の深かった楽天球団副会長、星野仙一氏(享年70)の訃報も届いた。節目の日に「チームとしても個人としても日本一を目指していけたら」と、天国に届く活躍を期した。

 悲しみをそっとしまい、晴れやかな笑顔で門出を迎えた。母幸世さんが運転する車で予定時刻より20分ほど早く到着した清宮は、バットケースを手に、詰め襟姿で新生活が始まる寮内へ。18歳の胸を占めるのは「みんなと、うまくやっていけるのかな」という少しの不安と「早くファイターズの一員になって戦いたい」という、たくさんの希望だった。

 年末年始に大切な人を相次いで亡くした。昨年12月29日に父方の祖父幸一さん(79)、今月4日には母方の祖母中江千恵さん(84)が死去。「両親が共働きだったので、ずっと面倒を見てもらっていたし、良い思い出ばかり。今の自分の原点となるものを、たくさん作ってくれた」。6日に祖母の通夜を終えたばかりだが「寂しかったですけど、ちゃんと入寮前にお別れできてよかった」と気丈に話し「フェンス際の打球を、ちょちょっと押してくれたらなって思います」と、明るい笑顔を振りまいた。

 急死した星野氏とも、縁が深かった。早実中1年の12年6月27日、日本ハム-楽天戦(東京ドーム)で始球式を行い、当時楽天監督だった星野氏から「お前は幸せな男だな」と声を掛けられたという。昨秋のドラフト会議では1位指名も受けた。「ラグビーを愛してくださっていて、父もすごく尊敬していた。ドラフトでは自分を指名していただいたという恩がある」と、しんみり。「何十年に1人の逸材」と小学生の頃から多くの期待をかけてくれていた球界の偉人へ「恐縮ですけど、天国で自分の活躍を見守っていて欲しいです」と、恥じないプロ生活を期した。

 前日には、都内にある自宅地下の練習場で父を相手に「バッティング納め」をして、旅立ちに備えた。「親をはじめ、幼少の頃からいろいろな人に支えられて今がある。みなさんに感謝したい」。今日9日には、いよいよ新人合同自主トレがスタート。伝説を目指して「日本ハム清宮」の物語が幕を開ける。【中島宙恵】