ヤクルトの「再起」への本気度が、米軍の輸送機オスプレイのごう音をかき消した。1日にスタートした春季キャンプでのシートノック中。沖縄・浦添の上空を「ゴー」という音を発しながら数回通過した。だが、その音に負けない活気がグラウンドにあふれた。
ノックを受ける野手陣は懸命に声を上げた。「ヘイッ!」「オッケー!」と自分を、仲間を鼓舞する声の重奏を約40分間響かせた。新主将の中村は「声は去年より出ていると思う。コーチ陣も言いやすい雰囲気を作ってくれています」と充実の表情を浮かべた。
昨季からの変化は、数値が証明する。三塁側ベンチ前に設置した日刊スポーツの音量測定計によると、最高で84デシベルを計測。同位置で計測したオスプレイは最高82デシベルだった。カラオケボックス内で90デシベルといわれる。本気の熱唱レベルの気合でボールを追い続けたのは、今季への気合の表れだ。
練習内容と量にも、変貌ぶりが見て取れる。開始は午前10時10分。アップ後には選手ごとにクリア設定距離が違う12分間走を実施。ベースランニングと続き、ボールを手にしたのは2時間後の午後0時3分。室内で非公開でのバントシフト練習、投内連係、シートノックと間髪入れずに行い、昼食は午後2時過ぎにずれ込んだ。午後には2時間ぶっ通しで打撃練習。小川監督は「一番大きな違いは練習量。元気もあったと思うよ。思いが伝わってくるね」と変化を見て取った。
投内連係で「声出せ!」とナインの背中を押した新任の宮本ヘッドコーチは「声はもっと出るはずかな。途切れさせず、みんながどんどん出すのが大事。一番手本にしたいのはホークス。広いグラウンドで大きい声を出すのが野球ですから」と日本一ソフトバンクを引き合いに、さらなる高みを求めた。初日は約10時間の猛練習で終えた。山田哲は「8年目だけど練習量は一番。この練習をやればうまくなるなって感じはすごくある」とうなずいた。最下位ヤクルトが、生まれ変わる。【浜本卓也】
◆音の大きさ 10デシベルは無音に近く、30デシベルでようやく人の吐息レベルとなり、一般的な会話は60デシベル前後といわれる。大きい音量では、ロックバンドの演奏が130デシベルで、ジェット機(距離200メートル)が120デシベル、チェーンソーの爆音は110デシベル、個室カラオケで90デシベル。ちなみに、14年2月7日に日刊スポーツが計測した当時ルーキーだったヤクルト秋吉のブルペン投球時の雄たけびは最高75デシベルだった。