西武が27年ぶりの開幕6連勝を果たした。菊池雄星投手(26)が8回2安打1失点で、開幕戦に続く2勝目。本調子ではなかったが、要所でチェンジアップを用い、粘り勝ちした。開幕から6試合全て先発投手に白星がつくのは球団初。プロ野球全体でも3度目の快挙だ。91年は開幕8連勝で日本一に駆け上がった。その27年前に生まれたエースに導かれ、10年ぶりの優勝へ最高のスタートを切った。
絶対に点をあげられない場面で、菊池は大胆に攻めた。2-1の6回だ。直前に味方が勝ち越した。2死一塁で、オリックス・ロメロ。3球でカウント1-2と追い込んで4球目、自ら選んだチェンジアップで空を切らせた。直前に外いっぱいの直球で見逃しを奪った。同じコースから落ちて逃げる球で相手4番を翻弄(ほんろう)。力強く右拳を握った。
わずか2安打1失点だが、「本調子ではない」と認める。逆球があり、先頭に四球があり、味方の先制直後に失点した。粘りながらは織り込み済みだ。オープン戦は寝違いもあり、最高で5回、70球まで。「実戦感覚がなく、正直、遅れは感じてます。でも、5月、6月で必ず調子は良くなる。4月は徐々に良くなれば」と腹をくくっている。
粘るための武器が、チェンジアップだった。直球、スライダー、カーブに続く第4の球を何にするか。キャンプ、オープン戦では、主にフォーク、ツーシームに取り組んだ。チェンジアップにかじを切ったのは前日。他球団で同球種を得意とする投手に関する弾道測定器トラックマンのデータを見た。「僕との差が数字で分かりやすかった。何センチ前で離すかなど」。この日のブルペンで「初めて投げて」使うことを決めた。
実は、登板2日前、4日の投球練習でも数球、投げていた。その時は「遊びですよ」。そんな姿を、土肥投手コーチは「遊び心は大事。それがないと全ての球で抑えようと視野が狭くなる」と評価する。本調子でなくても心に余裕があるから、抑えられる。最終8回はエンジン全開。安達から最速153キロで空振り三振を奪った。「最後に出てくれた。次は良い形で行くと思う」と前を見た。
開幕6連勝は、くしくも自身が生まれた91年以来。「僕は黄金期は知らないので何とも言えない。ただ、辻監督を胴上げしたい。強く思っています」。当時の主力が指揮を執るチームでエースを張る。時を超えた成功ストーリーが始まった。【古川真弥】