エースと恋女房の共同作業で猛虎にやり返した。巨人菅野智之投手(28)が阪神打線を6安打2失点に抑え、今季初の完投で2勝目を挙げた。同カードの開幕戦で自身ワーストの12安打を浴び、5失点。2回に先制打を放った同学年の小林誠司捕手(28)と研究を重ね、宿敵にリベンジを果たした。打線は制球に苦しむ藤浪らから8得点を奪い、エースを大量援護。今季初の敵地・甲子園での伝統の一戦を制した。

 何度も意思をぶつけ合った。6回無死一、二塁。菅野は鳥谷を追い込んでからの5球目、7球目のサインに4度ずつ首を振った。直球、スライダー、フォーク、カーブ、カットボール。多彩な球種を駆使したが9球粘られた。10球目。サインに1回でうなずいた。最後は内角低めのスライダーでバットの空を切った。「開幕戦で散々やられたので、小林と相談しながら投げられた」。2人で敵を探り、最良の答えにたどり着いた。

 屈辱を晴らすために、対策を練った。開幕戦は自身ワーストの12安打を浴び5失点。早いカウントから振りにくる阪神打線に序盤からつかまった。反省を生かし、4回まで直球、ワンシーム、スライダーしか使わなかった。「小林と『序盤は少ない球種でシンプルに攻めよう』と話していた」。打ち気な虎をぎりぎりまで泳がせ「6回くらいのしのぎ方をできたことが今日の収穫」と勝負どころで暴れさせなかった。

 これまでもこれからも2人で歩むと誓った。3月15日ソフトバンクとのオープン戦で今季初バッテリーを組んだ。前日の晩。小林の部屋を菅野がノックした。「明日、よろしくね」。ひと言だけでその場を去った。小林は「久しぶりだったというのもあると思うけど、なんかうれしかった」。主戦級としてバッテリーを組んで4年目で初めてのこと。照れもあったが、同学年の絆の深さを改めて確かめあった。

 相棒としてエースを助けたかった。2回1死一、二塁。小林は藤浪の154キロ直球をはじき返し、右前へ先制適時打を放った。「たまたまです」と笑ったが、これまで菅野の3度の登板でいずれも先取点を与えていた。「立ち上がりからこっちが有利になる投球をしてくれた。さすがだなと思います」。期待通りの投球にバットで応えた。

 菅野は点差が離れても最後まで投げきった。「ひとつ勝つことで知った喜びがあった。次も最後まで投げる気持ちを忘れずに投げたい」。エースと女房役がチームも波に乗せる。【桑原幹久】