ヤクルト由規が今季初勝利で、チームの連敗を5で止めた。立ち上がりから気迫がみなぎった。1回2死。前夜に決勝本塁打の筒香にもひるまない。外角低め150キロで空振り三振に仕留め、勢いに乗った。最速151キロの直球とスライダーを軸に5回1死まで無安打投球。7回2死二塁、106球で降板も、スタンドからの拍手と大歓声が1安打投球の快投を示していた。「素直にホッとしています」と頬を緩めた。

 11年に右肩を故障するまで“最速161キロ右腕”で鳴らした。かつては投球のたびに、球場内の球速表示に目をやった。だが手術を経て復活した今は違う。「スピードは追ってません。球威やキレ、打者の反応を見ています」。1球ごとに打者を凝視し、直球と変化球を丁寧に投げる投球に変貌を遂げようとしてきた。

 自身の大一番でも、自分を信じた。ここまで2戦2敗で、いずれも4回3失点でKO。同じ失敗を3度も繰り返せない。そんなマウンドでも、直球とスライダーを軸にストライクゾーンに思い切り投げ込む今のスタイルを貫くと決めた。7年ぶりの中6日の登板に向け、軽いテニスボールや軟球を短い距離で投げることで手首の使い方や指先の感覚を再確認。「今日駄目だったらって割り切りもあった。細かいことを気にせず腕を振る」。やってきたことを、すべてぶつけた。「いつもより冷静に打者を見られた」と、うなずいた。

 状態面と中継ぎ陣強化のため今日にも登録抹消される。だが小川監督は「素晴らしいのひと言。今日は由規に尽きる。肩を痛める前は球威で押すスタイル。スマートな、安定した投球は初めて見た」と称賛した。柔と剛を組み合わせた“ニュー由規”は、まだまだ進化する。【浜本卓也】