ヤクルトが23日、天敵打破へ“仮想ランディ”を用意した。今日24日からの阪神2連戦に向け、愛媛・松山に移動後に全体練習を実施。24日に先発予定のランディ・メッセンジャー投手(36)は昨季3戦2敗と大の苦手。198センチから投げ下ろす速球対策に、身長192センチで現役時代は投手で6勝の宮出隆自打撃コーチ(40)がマウンドから打撃投手を務めた。犠打練習のマシンも高さ約20センチの台に乗せて行うなど、メッセンジャー攻略に執念を見せた。

 打撃練習前。身長192センチの大男が、威風堂々と坊っちゃんスタジアムのマウンドに歩を進めた。本来なら打撃ケージ裏に陣取る宮出打撃コーチが、身長198センチの“仮想メッセンジャー”として登場。本家のようなひげはないが、その表情はいたって真剣。現役時代に通算打率2割7分7厘の好打者は、実は投手としても6勝を挙げている。通常の打撃練習と投げる距離は同じだが、打撃ケージを前に出すことで投手の位置をマウンドまで下げ、傾斜を利用して長い右腕を高い位置から振り下ろした。

 メッセンジャーとの対戦成績は通算10勝18敗で、昨季は3戦2敗。現在17イニング連続無得点中と“カモ”にされている。今季初対戦で、負の歴史に終止符を打たなければならない。愛媛入り後の宿舎ミーティングでは、長身から投げ下ろす角度のある直球を攻略する必要性を確認。石井琢打撃コーチの発案で“仮想メッセ”に指名された宮出コーチは「おれの球を打ってくれ」と告げた。

 対策はこれで終わらなかった。一塁側ファウルゾーンでの犠打練習用のマシンを、高さ約20センチの台の上に置いて“長身投手”に仕立てた。石井琢コーチは「やらないで後悔するよりやって後悔した方がいい。うちには“ヤクルトのランディ”がいますしね」と言えば、宮出コーチも「気持ちよく打たせました。いい結果が出るのはみんながうれしい。そのために最高の準備ができれば」と熱かった。

 首脳陣の本気度は選手にも伝わった。山田哲は「いろいろ工夫してくれる。ちょっとでも打てるようにという思いが込められた球なので、いい練習になりました」と感謝した。大男に見下ろされても、もう屈しない。本家を打ち崩す準備は整った。【浜本卓也】

 ◆宮出隆自(みやで・りゅうじ)1977年(昭52)8月18日、愛媛県生まれ。宇和島東高2年時に甲子園出場。95年ドラフト2位でヤクルト入団。03年に故障を理由に投手から野手へ転向。09年楽天へトレード移籍。11年ヤクルト復帰するも12年現役引退。13年からヤクルトコーチ。通算成績は投手で49試合6勝5敗、通算防御率4・73。打者で701試合、1655打数、458安打、39本塁打、216打点、通算打率2割7分7厘。現役時代は192センチ、90キロ。右投げ右打ち。

 ◆ヤクルト対メッセンジャー 昨季は公式戦で3度対戦。4月6日は6回までに7安打を浴びせてKOするも、チームは延長11回サヨナラ負け。7月23日は8回を12奪三振、無得点に抑えられ、さらに3回にはメッセンジャーに来日初本塁打を献上するなど投打で完敗。8月4日は同投手相手に通算4度目となる完封負けを喫した。ヤクルトは昨季から17イニング無得点が続いている。