阪神敗色濃厚の延長11回2死一塁。一塁側ベンチ上にいた数人の子どもたちが、甲高い声で上本の応援歌を歌う。だが、絶好調男は三振に倒れ、ゲームセット。試合後は無言で、敗戦の悔しさをにじませた。それでもこの日、背番号00が誰よりも虎党に笑顔を届けたのは間違いない。

 3試合連続の3安打。3回、5回に小笠原から。同点の9回は1死一塁で鈴木博から左前にはじき返し、サヨナラ機を作った。凡退した初回、7回の打席も強い打球を飛ばした。規定打席には足りないが打率は4割2分2厘だ。前日に語った「1球1球をおろそかにしないようにやっています」の言葉を結果で証明。まさに未来のプロ野球選手へのお手本になっている。

 今季最多の観衆で埋まった甲子園。内野席では、特有の打撃フォームをまねする子どもが続出していた。メガホンをバットに見立てて大きく構え、両足でリズムを刻む。今の阪神ではあまりない光景だ。ゴールデンウイークの甲子園3試合で放った9安打の意味は大きい。

 阪神が今季、固定できずにいた1番打者。3試合連続、今季6度目の重責を務め上げている。2番植田との俊足巧打コンビは新打線の顔にもなりつつある。今日5日、13年にマートンが残した4試合連続3安打の球団記録に挑戦する。【柏原誠】

 ▼上本が自身初の3試合連続猛打賞を記録。球団最長は、マートンの4試合連続で、13年9月18日広島戦~同22日ヤクルト戦で達成。なおセ・リーグ最長は5試合で、54年西沢道夫(中日)が記録。