広島緒方孝市監督(49)が、今日22日からのリーグ戦再開を前に日刊スポーツの単独インタビューに応じた。交流戦7勝11敗もリーグ首位をキープ。課題の投手陣に危機感を募らせた指揮官は、不振が続く開幕投手の野村祐輔投手(28)に猛ゲキを飛ばしつつ、球団初リーグ3連覇&34年ぶり日本一への厳しい戦いを「絶対に乗り越えられる」などと語った。【取材・構成=大池和幸、前原淳】
-最大12あった貯金が6に減ったがリーグ首位にいる。現状の満足度は
緒方監督(以下緒) 満足なんかしてないよ。1カ月しないうちに先発ローテから2、3人いなくなった。うまく事は進まない。今年は(就任)4年目だし、そういうことも想定しつつ準備はやってきたつもり。ただ厳しいよね。この6月、特に交流戦は5割でいければと思っていたから。
-チーム防御率はリーグ5位。交流戦も18試合で104失点と投手が苦戦
緒 ペナントを勝ち取るには投手の力がものすごく大きい。打つだけじゃ、絶対に勝てないから。
-誤算は大きかった?
緒 そりゃそう。野村がいない。去年最高勝率の薮田がいない。若手の有望株の中村祐太がいない。これが、この世界。みんながみんな順調にいかない。出てきてもらわないと困る投手たちだからね。どうここからはい上がるか。本当は野村祐輔が帰ってきて、軸で回ってもらわないといけない。はい上がってきてくれないと、さらに厳しい戦いが待っている。取って代わる九里がしっかりと、思う以上の投球をして頑張ってくれている。
-野手への評価
緒 頑張ってくれている。想定外のけがもあった。最初に(鈴木)誠也も足の状態が落ち着いていなかったが、タナキクマルが引っ張った。丸にアクシデントがあった時も田中と菊池が引っ張ってくれた。そこに新井が戻って精神的な柱として支えている。2軍も含めた全員で戦っている。
-監督は「毎年、チームの色は変わっていく」と言ってきた。今年の色は
緒 去年、一昨年だったらこの夏場に入っていく時には、ある程度の形はできつつあった。今年は投手陣の不安があり、野手にしても安部が不振だったり…。マイナスの話ばかりしたくないんだけど。今までと違う要素があるから。その中でも新しい力がそこに入ってくることを望んでいる。1つの形で何年も続かないと分かっている。ここから誰が出てくるか分からんよ。西川がもう1回ブレークするか、バティスタが爆発するのか。野間も忘れちゃいかんね。
-今年の選手の意識の変化を感じるか
緒 うん。勝つためにはこういう野球をしなきゃいけないと、もう分かっている。単純に言えばミスすれば負ける。相手にスキを与えないこと。やるべきことを続けていくことが、勝ちや優勝につながっていく。ただ思い通りにはいかない。相手だって成長しているし、力は僅差だから。
-監督はナイターでも朝早く球場に来て映像チェックなどに忙しい。今年の生活リズムは
緒 去年と変わらない。やることは山ほどあるし。
-リラックスは
緒 今、野球を忘れさせてくれるのは家族。それと相変わらず、犬(愛犬の優勝くん)よ。そういう時間もないとね。いっぱいいっぱいになってしまうから。
-監督という仕事をする上で大事なことは
緒 チームを勝たせるのが重要なのは当たり前。ただ、それだけじゃない。ファンに喜んでもらう。カープの野球を見せる。これがすべてなんよ。これをやれば勝ちにつながるし、結果的に負けた試合でも、スピード感ある最後まであきらめないカープの野球をやれば、高いお金を払って球場まで来てくれたお客さんも多少は満足して「また応援したろうか」という思いを持ってくれるだろうし。
-今は本拠地が常に満員とすごい盛り上がり
緒 カープの野球が素晴らしいと、お客さんが認めてくれているわけよ。単に勝ってるからじゃない。この環境は選手が作り上げたもの。選手の力。
-そこに育成という作業も入ってくる
緒 それはカープの宿命だから。大型補強やFAで選手をとるのは難しい。その中で勝つから、ファンの方も認めてくれる。
-現役時代の経験で指導に生きていることは
緒 難しい。昔と違う。俺らは満足に走れなくても投げられなくても、絶対にプレーしてたもん。自分のポジションがなくなる。今はそれが許されない。指導者の責任問題になる。自分の中でラインを引いて、割り切ってやってる。選手が痛いと言えば休ませる。
-リーグ戦が再開
緒 厳しい戦いが待っているのは分かっている。でも、乗り越えられるだけの力は十分にあると思う。苦しみの先に大きな喜びがある。去年、一昨年と2回経験しているわけだから。絶対乗り越えられる。カープの野球を1試合1試合やって、リーグ優勝ともう1つ、まだ登っていない日本一という山に登りたい。
-パ・リーグに勝つ必要がある
緒 パ・リーグじゃない。ウチの野球ができないから(交流戦で)こういう結果になっている。足りないところばかり。相手じゃないんだって。自分たちのしっかりした戦いの形をつくることが大事。
◆緒方孝市(おがた・こういち)1968年(昭43)12月25日生まれ。佐賀県出身。鳥栖高から86年ドラフト3位で広島入団。95~97年に盗塁王を獲得。99年に36本塁打を記録するなど主力選手として活躍。09年に現役引退後はコーチを務め、15年監督就任。現役時代は1808試合、打率2割8分2厘、1506安打、241本塁打、725打点、268盗塁。181センチ、80キロ。右投げ右打ち。