全セの先発、中日松坂大輔投手が12年ぶりの球宴マウンドに上がった。直球勝負にこだわり、予定の2回には達せず、1回5失点で降板。試合後は反省と納得の入り交じった表情だった。

 「宣言通り、直球系で勝負にいって、見事に返り討ちにあいました。こういう(打ち合いの)試合展開になるきっかけを作ってしまい、申し訳ないです。もう少し長いイニング、まともな球を投げたかった。悔しいというより、パ・リーグの打者のスイングを見て、すごいなと感じさせられました」

 誰よりも大きな歓声を浴びて、初回のマウンドに向かった。いきなり秋山翔吾に先頭打者弾を浴びたが、続く柳田悠岐を「気持ちよかった」と外角高めの137キロで空振り三振。満足そうに口元をゆるめた。

 その後、横浜高の後輩近藤健介に中前打され、中田翔には死球。吉田正尚には中前に適時打を打たれ、2死後には森友哉に右越え3ランを打たれた。1回5失点。30球を要し、予定していた2イニング目のマウンドには上がらなかった。

 「直球勝負。僕の直球は動きますが」と宣言していた通りの投球内容。得意のスライダーや落ちる球を完全に封印した。フルスイングで立ち向かってくるパ・リーグの打者に打たれても、変えなかった。

 「びっくりするような数の票を入れていただいた」と感謝する。セ・リーグの先発部門で2位の巨人菅野を引き離す39万4704票。だが、横浜高、西武、レッドソックスやWBC日本代表で見せてきた、全盛時の打者をねじふせるような速球は投げられない。試合前には正直に打ち明けた。「期待に応えたいけど、どうやって投げようか悩んでいます」というのは本音だったはずだ。

 これが復帰戦だった。6月17日の西武戦の試合直前に背中を捻挫し、登板回避。慎重に調整を続け、晴れ舞台に合わせた。コンディションに問題はないことは証明した。後半戦再開後は先発ローテの1人として再出発する見込みだ。

 たび重なる右肩故障などを乗り越え、新天地の中日で復活した「平成の怪物」。打たれはしたが、球宴の舞台で、あらためてその名前を全国のファンに示した。