球界屈指のリードオフマンが史上初の快挙を成し遂げた。全パの1番中堅で先発出場した西武秋山翔吾外野手(30)が初回、松坂からソロ本塁打を放った。昨年の第1戦に続く2年連続の初回先頭打者本塁打で打線に勢いを与え、全パ勝利に導いた。

 怪物を上回る粘り腰だった。初回先頭。秋山は松坂に3球で追い込まれたが、簡単には終わらない。ボール、ファウル、ボール、ファウル、ファウルと続けた。「なかなか前に飛ばない。少し、ポイントを早めに」と修正を試みた。9球目、膝元に食い込んできた134キロを捉え、ライナーで右翼スタンド最前列へ突き刺した。プロ野球史上初、球宴で2年連続先頭打者本塁打が生まれた瞬間だった。

 試合前の心がけと一見、違ったように見える。球宴は勝ち負けを度外視し「ホームランか、三振か」と、とにかくフルスイングで臨む打者も少なくない。秋山は違う。「僕がフルスイングをやっても、誰も気がつかないでしょ」とおどけるが、真意はこうだ。

 秋山 後半戦が始まるんですよ。ここで打撃が崩れたら、元も子もない。フルスイングして変な打撃になったら、戻すことが難しくなる。普通に、シーズン中と同じように打ちますよ。変に、遠くに飛ばそうとは思いません。貴重な実戦と思っています。

 前半戦だけでリーグトップ114安打を重ねた首位打者の矜持(きょうじ)だった。ところが、結果は1発になった。もちろん、狙ったわけではない。「初回、落ち着かない感じで打席に入ってしまった。夢中にやった。たまたま、ホームラン。まあ、打てないよりは良かったです」と、控えめに喜んだ。

 松坂は西武の大先輩。予定されていた交流戦の対戦も、松坂が直前で登板回避のため流れた。「対戦する機会は正直、ないと思ってました。新鮮な気持ちがありました」と感慨深げだった。その先輩から放った1本。「明日も丁寧に、いつもの打撃ができれば」。1発を打ったからと浮つかない。戒めで締めた。【古川真弥】