18歳の夏に掲げた決心が、ようやく実った。巨人今村信貴投手(24)が初完封勝利を挙げた。直球と50キロ以上の緩急差がある80キロ台のスローカーブを有効に使い、中日打線を6安打に抑えた。プロ1年目の12年8月30日の2軍戦でノーヒットノーランを達成した経験はあるが、球団史上最も遅い入団7年目で「1軍での完封」をついに果たした。

 追い続けた最後の「0」を、ようやく並べられた。9回。今村は簡単に2死を取った。だが、連打を浴びて一、二塁。完封勝利目前で、サヨナラ負けのピンチを招いた。「1発でサヨナラという頭はあった。低く、慎重にと意識しました」。迎えた中日アルモンテ。2球目、外角低めのフォークで芯を外した。中飛でヤマ場を切り抜けると、捕手小林へ飛びつくようにタッチを求めた。

 18歳の時から、この日のために歩を進めてきた。12年8月30日のジャイアンツ球場。刈り込まれた短髪の左腕が、イースタン・リーグ日本ハム戦でノーヒットノーランを達成した。高卒新人では28年ぶりの快挙。しかし試合後、当時2軍担当だった木村投手兼トレーニングコーチと黙々と外野を走った。約40分間、足音とセミの鳴き声だけが夕闇に響いた。「まだまだプロで通用するとは思っていない。いつか1軍の試合を1人で投げきれる投手になりたい」。余韻よりも、明日への1歩を求め続けた。

 そこから、6年の歳月は平らではなかった。1軍と2軍を行き来し、今季は3軍からのスタート。昨季は2軍最多勝を獲得するも1軍で結果を残せず、メンタルトレーニングを導入。「なぜ打たれるのか」と紙にしたためて、必死にはい上がってきた。根本にあるのは、あの日、ジャイアンツ球場の外野を並走してくれた木村コーチからの言葉。「投手は投げ終わったら、すぐに次の登板に向けた準備をしないといけない。勝とうが負けようが関係ない」。再び訪れる登板に、ただ愚直に向かい続けた。

 抱いた大志はようやく結実した。高橋監督は「今日はいい結果が出たので、さらに1歩上に行ってくれたらいい」と期待を込めた。たどり着いた完封劇に「最高です」と口にした。左腕は一瞬だけ笑みを見せ、また次の試合に向かう。【島根純】