劇的サヨナラ勝利はメモリアルの1勝も運んできた。延長11回から2イニングを封じたソフトバンク中田賢一投手が、プロ通算100勝を手にした。「みんなの気持ちに乗せられてマウンドに上がった。自分の野球人生の中でも忘れられない1勝になると思う」。36歳の右腕が気迫の投球で「山賊打線」を狩った。

延長11回のマウンドは四球と安打で2死一、二塁のピンチを招いた。動じなかった。松井をカウント2-2から134キロのフォークで空振り三振に切った。「もう1回行くつもりだった。気持ちを切らなかったのがよかった」。延長12回。森、斉藤彰、そして秋山の3人をすべてフォークで空振り三振に仕留めた。絶対に負けない-。14年目のベテランは球に魂を込めた。

6月10日の交流戦の対中日(ナゴヤドーム)で99勝目を挙げてから足踏みした。先発を外れ、中継ぎに回っても「とにかく1軍にいることが大事」と、持ち場で汗をかいた。07年に亡くなった父治英さんの言葉は胸に刻み込んでいる。「息の長い選手になれ」。この夏も福岡・北九州市まで車を飛ばし、墓前に後半戦の活躍を誓った。「強い体に生んでくれた両親に感謝したい」。ウイニングボールはサヨナラ弾で消えたが、秋山を三振に切ったボールは捕手高谷がそっと渡してくれた。先月末からウイルス性胃腸炎で離脱。医者からは1食の量を減らすように指導された。「僕、けっこう1食の量が多かったんで。へへへ」。体調管理はプロとしての最低の義務。でも、おいしい白星は減量するつもりはない。【佐竹英治】

▼通算100勝=中田(ソフトバンク) 26日の西武18回戦(ヤフオクドーム)で今季5勝目を挙げて達成。プロ野球136人目。初勝利は中日時代の05年4月15日阪神1回戦(ナゴヤドーム)。