巨人山口寿一オーナー(61)が9日、宮崎キャンプを訪れ、選手、首脳陣の前で長嶋茂雄終身名誉監督(82)のメッセージを代読した。宮崎入りはかなわなかったミスターの思いを感じながら、5年ぶりのV奪還に向け、10日は主力組も出場する紅白戦が行われる。

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朝から降り続いた雨がやんだ宮崎で、練習開始前に山口オーナーが原監督、選手たちの前に立った。右翼付近で訓示を行った後、丁寧に3つ折りした紙を取り出し、印刷された長嶋終身名誉監督からのメッセージを読み上げた。

「ジャイアンツは今年、立派なチームになるように、その意味において、力の限りやるためには、今年の巨人軍の選手をはじめ、コーチ、監督一緒になって頑張ってもらいたい。今年は新たな巨人軍になると思う。大いに頑張りましょう。長嶋茂雄」

毎年恒例だった「勝つ、勝つ、勝~つ!」の言葉を聞くことはできなかったが、原監督を迎え、FAで丸、炭谷を獲得するなど大型補強したチームを「新たな巨人軍になる」と予言。山口オーナーは「ところどころ日本語がおかしいところがあるかもしれないけど、長嶋さんらしい。『新たな巨人軍』という言葉が入ってくるのは、そこに長嶋さんの期待の思いがこもっているんじゃないでしょうか」と言った。

昨年7月に胆石治療で入院した長嶋氏は、本来であれば直接宮崎入りし、毎年恒例の訓示を行いたかったはずだが、メッセージを託す形でチームを鼓舞した。原監督は「本人はグラウンドに来たいだろうなと、そういう中で思いを伝えてもらった。頑張ります。グラウンドに来られたいというのは、ヒシヒシと感じました」と受け取った。

今日10日には新加入した丸、炭谷、中島、新外国人のビヤヌエバらを含め、主力選手がそろって出場する紅白戦が行われる。5年ぶりのV奪還に向け、今キャンプはチーム内競争をテーマに掲げ、実力主義の中でチームの底上げを図っている。ミスターが望む「新しい巨人」に生まれ変わるためにも、今年こそ「勝つ、勝つ、勝~つ!」を実現したい。【前田祐輔】

◆近年の長嶋氏春季キャンプ視察 16年2月13日、高橋新監督を激励するため春季キャンプ訪問。雨天によりドーム室内での練習だったが、松井臨時コーチとともに阿部、岡本らの打撃を指導した。17年には前評判の元気のなさを受け「もっと元気を出そうじゃないか」と闘魂注入。首脳陣、選手に対して訓示を行い、名文句の「勝~つ!」の唱和を求めた。18年はOB戦翌日に訪問し、2軍からブルペン、野手陣を視察。訓示では前年同様の雄たけびを上げ、3万8500人の観客を沸かせた。