獅子らしく、雄々しく5割復帰だ。西武先発の多和田真三郎投手(26)が、オリックス相手に7回2死まで完全投球。結局9回を2安打で投げきり、完封でサヨナラ勝ちを呼び込んだ。エースの鬼気迫る投球に攻撃陣も奮起。富士大の先輩にあたる外崎修汰内野手(26)は、7回の帰塁時に右手小指を脱臼。自分ではめ直す荒療治で乗り越え、9回にもサヨナラ劇を呼び込む四球を選んだ。

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西武多和田の熱投がサヨナラを呼んだ。117球目。この日の制球を象徴するような内角低め真っすぐでオリックス・ロメロをえぐった。「いくしかない。(森)友哉を信じて投げました」。空振り三振。詰まってテキサス安打になることを恐れ、1度はサインに首を振ったインコースを4球続けた。2安打無失点で9回完封。その裏、敵失で今季初勝利が舞い込んだ。

強気に、低めに集め続けた。7回2死まで1人の走者も許さない完全ペース。吉田正に右前打されても「最初からいけると思ってなかったんで。1本出て逆に力が抜けて良かった」。集中は途切れない。

開幕投手の大役に応えられず、2戦勝ちなしだった。「1人の先発投手として、もっと気持ちの入った投球を見せないと周りが付いてこない」。今度こそ、の気迫に同門、富士大の1学年先輩がガッツを見せた。直後の7回裏。一塁走者の外崎はけん制の帰塁時に右手小指を脱臼した。

あらぬ方向に曲がった指にベンチは静まり返ったが、心配をよそに自ら指をはめ直し、テーピングを巻いて戦線復帰。痛みを押してバットを握った9回先頭で四球を選び、歓喜のホームを踏んだ。「本人がいけるって言うんだからさ」と送り出した辻監督は言った。「指は反対を向いていた。脱臼して自分で…痛かったと思う。最後も四球を選んでくれて。あれが大きかった。多和田を勝たせてあげたい一心だった」。

手負いの外崎も、2年ぶりのバントを決めた栗山も同じ気持ちだったはず。今日13日は多和田の26歳の誕生日。「家族が何かくれそうなんで楽しみです」と笑うがその前に-。「ウイニングボールは奥さんにあげたいです」。チームの連敗を止めた勝利球。日ごろの感謝のお返しに、最高のプレゼントができた。【鎌田良美】