迷いなく振り抜いた。阪神大山悠輔内野手が、バットを持ったまま一塁ベース方向に2度、3度とサイドステップ。左翼ポール際に飛んでいく打球の行方を目で追った。白球は、そのままスタンドに着弾。先制2号2ランを神宮の夜空に描いた。

「しっかりと自分の強いスイングをすることができた結果がホームランにつながったと思います」

4回だった。1死一塁でヤクルト先発ブキャナンの2球目を強振。真ん中に来た131キロチェンジアップを左翼席にたたき込んだ。5試合ぶりのベース1周。ゆったりと本塁を踏むと、がっちり糸井とエルボータッチだ。

なんとしても手に入れたい先制点を4番のバットで勝ち取った。この日は試合前の円陣を2分近くも組むなど、打線が「投手陣を援護するぞ」という雰囲気が漂っていた。「(先発の)青柳さんをなんとか早い段階で援護したかったので、先制することができてよかったです」。ベンチ前で祝福される背番号3は笑みを浮かべた。

体重移動の工夫が奏功した。大山は試合前に清水ヘッドコーチから助言を受けていた。スイング時に体重が後ろに残りすぎることもあり、1歩後ろにステップするように指示を受けた。1度下がってから、思い切って前で捉える。その教えが本番でも生きた。

ただ、大山の2ランだけでは勝ち切れなかった。試合後、三塁側ベンチからクラブハウスに向かう大山が、スタンドで声援を送るファンの前で声をしぼり出した。「勝たないと意味がないので。明日、勝てるように頑張ります」。猛虎打線の火付け役へ。もちろん重圧はある。だが…。やはり4番が打たないと、何も始まりはしない。【真柴健】