打率0割のベテランが止めた! 広島最年長のベテラン石原慶幸捕手(39)が、途中出場の9回2死二塁から中前に今季初安打となる決勝打を放った。開幕から続いたカード連続負け越しを5でストップ。頼れるコイの兄貴分が、チームの重たい空気を振り払った。

三塁側ベンチが今季一番の盛り上がりを見せた。2点を追い付いた9回。なおも2死二塁から石原が、巨人守護神クックが5球続けた真っすぐをたたいた。捕手が高めに外そうと要求した球が、ストライクゾーンにきた失投を逃さなかった。振り抜いた打球は中前にはずみ、二塁から勝ち越しの走者が生還。頼れるチーム最年長が重苦しい空気を振り払った。

「先発の(野村)祐輔から無駄な失点がなかった結果が、こういう試合になったと思う。これがカープの戦い方。みんなで戦うのがカープの野球なので、これを続けていけたらと思う」

ベテランは誰よりチームのことを思う。劣勢からチーム一丸で追い付き、終盤に勝ち越されても諦めない。昨季までのような戦い。そして勝ったから意味がある。試合前までの打率は0割。菊池涼が同点打を放った時にはネクストバッターズサークルにはいなかった。

1点ビハインドのまま2死一、二塁であれば代打が送られていた。菊池涼の同点打で巡ってきた今季5度目の打席に集中力を研ぎ澄ました。「追い込まれていたので食らい付いていこうと。何とかしたいと思って、最高の結果になった」。初めてリードを奪うと、その裏の守備ではピンチを招きながらも最少得点差を守りきった。

チームメートから慕われる兄貴分でもある。新加入の長野をキャンプ中から積極的に食事に誘い、得意の「飲みニケーション」でチームの輪に加えた。スタメン出場激減も「本当に頑張っている選手たちの1ヒット、1つの好投、1つの好プレーがうれしい」。ベテランの優しさは伝わっている。この日の勝ち越し打に、自然と後輩たちはベンチを飛び出した。

緒方監督は「よく打ってくれた」と絶賛。1本塁打を含む2安打2打点の菊池涼も「今日はイシちゃんでしょ」と大喜びだった。ベテランの意地の一振りで開幕6カード連続負け越しを阻止するとともに、開幕から続く重苦しい停滞感にも風穴をあけた。【前原淳】