また1つ、新たな称号を手にした。日本ハム金子弌大投手(35)が18日、移籍後初勝利で史上18人目の全球団勝利を挙げた。古巣オリックス相手に5回1安打無失点の好投。登板5試合目で記念の1勝をつかんだ。昨オフに自由契約となり1年契約で新天地へ。沢村賞など数々のタイトルをつかんできた右腕が、プロ初登板した球場で再スタートを切った。

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祝福の拍手は、両チームのファンから注がれた。ヒーローインタビュー。ポーカーフェースを笑顔に変えて、金子が両手をたたいて応えた。古巣オリックス相手に移籍後初勝利。「すごい巡り合わせ」と感激した。「たまたまかな」という全12球団勝利で、メモリアルな1勝が同時に舞い込んできた。「まずはチームの3連敗を避けたかった。それだけを考えて投げた」。

真っすぐな球筋に、思いを乗せた。直球は最速147キロを計測。直球を軸に攻め、チェンジアップやフォークなど多彩な変化球が生きた。5回1安打無失点。5三振を奪い、的を絞らせなかった。3月30日、開幕2戦目のオリックス戦は、5回4安打2失点で勝ち負け付かず。「打者と対戦することに違和感がなかった」と白星につなげた。

新たなチームは、12球団の中でもハードな移動を強いられる。家族を連れて、大阪から札幌に住居を構えることを決意。投手陣最年長の35歳。遠征先の宿舎には、愛用のマットレスを常に置かせてもらっている。かつて本拠だった大阪には、新たにマットレスを購入し同様に常備。長年、第一線で投げ続けてきた体を最大限にいたわり続けている。

一時代を築いてきた大投手ながら、細かい配慮を欠かさない。今カード初戦には、チームに高級生食パン「乃が美」を大量差し入れ。裏方スタッフには感謝の思いを込めて、サングラスやシューズなどをプレゼントしている。後輩選手には技術はもちろん、選手としての考え方などを親身にレクチャー。圧倒的なオーラをまといながら「律義な人」として親しまれている。

栗山監督は「素晴らしかった。昨日まで(2連敗と)難しい流れの中で、しっかり試合をつくってくれた」と感謝した。プロ初登板と同じ神戸で、再スタートを切った。「ここではたくさん投げさせてもらっている。平成最後に、ここで投げさせてもらって感謝しています」。金子弌大は、まだ進化を続けている。【田中彩友美】

▼日本ハム金子が古巣オリックスから初勝利を挙げ、現12球団からすべて白星をマークした。セ、パ12球団となった58年以降、全球団勝利は18人目。05年の交流戦開始後では、近鉄を加えた13球団勝利の工藤公康、杉内俊哉、寺原隼人を含め15人目の達成になる。