故障者続出のソフトバンクに、新たなヒーローたちが誕生した。工藤公康監督(55)が周東佑京外野手(23)、三森大貴内野手(20)の2人をプロ初スタメンに抜てき。2番左翼の周東は4回にスクイズを決め、5回にはプロ初安打となる1号3ランを放ち4打点。9番二塁の三森は猛打賞で1打点と期待に応え、今季最多タイの16安打、今季最多得点の16点で西武に快勝した。

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周東が、自分でもビックリするアーチをかけた。5回2死一、三塁。高木勇の直球を思い切りたたいた打球は、そのまま鷹党が待つ右翼席へ消えていった。「真っ芯で打つことができた。練習でもあんな打球を打った記憶がない。めちゃめちゃ気持ちよかった」と、笑顔でダイヤモンドを1周した。2軍でも3軍でも本塁打なし。昨オフのU23代表では1本打ったが、ホークスでは初めてだった。

「吐きそうだった」と緊張の初スタメン。相手先発は高橋光。周東が東農大二時に、相手は前橋育英で1学年下。3年の群馬大会決勝で敗れ、2年生エースの高橋光は全国制覇した。「(2年秋の大会と計2試合対戦し)8打数無安打5三振くらい」と全く打てず。この日の1、2打席目も打てなかったが、4回には今季チーム初のスクイズを決め、プロ初打点。6点目を奪い、KOした。

17年育成2位。今季はキャンプからA組に入り、開幕直前の3月26日に支配下登録を勝ち取った。3軍制で今季育成は24人、支配下65人でスタートした。支配下へ上がるのは狭き門。「(他の育成は)投手なら打たれろと思っていた」と背番号「23」になった後、正直な思いを明かした。

16年ドラフト4位の三森も「今年が自分にとって勝負の年」と位置づけていた。昨オフ高卒3年目、4年目を終えた支配下の選手が育成に落ちる姿を見てきただけに、チャンスを逃すわけにはいかなかった。3回にプロ初安打。二盗も決め、プロ初盗塁。4回には投前の高いバウンドの打球で適時打とし、プロ初打点。工藤監督のリクエストによるリプレー検証で「アウト」から「セーフ」になった。三森は「自分ではセーフだと思っていた。ボールは親に渡します」と、中学から青森山田へ野球留学させてくれた両親へ感謝した。

釜元が左太ももに違和感を抱え、高田は前日20日に右足に自打球を当てていた。故障者を増やさないために工藤監督は周東、三森を起用。「初もの尽くしで本当によかった。若い人が頑張るとチームは活性化する」と喜んだ。今季推定年俸は周東が600万円、三森が500万円。巨大戦力、金満球団と言われるホークスで、たくましい若鷹が飛び出した。【石橋隆雄】

◆周東佑京(しゅうとう・うきょう)1996年(平8)2月10日、群馬県生まれ。17年育成ドラフト2位。1年目は2軍で90試合に出場、27盗塁。ウエスタン・リーグ盗塁王。179センチ、67キロ。右投げ左打ち。

▼17年育成ドラフト2位で入団した周東がプロ初本塁打。育成ドラフト入団選手の本塁打は10人目。10年育成ドラフト6位の甲斐も本塁打を放ったが、育成ドラフト入団選手のアベックアーチは、甲斐、牧原(ソフトバンク)が18年7月16日西武戦(ヤフオクドーム)で記録して以来2度目。