まさに神の手だ! 楽天が延長11回、9-8で日本ハムにサヨナラ勝ちした。最後は犠飛で本塁へ突っ込んだ藤田一也内野手(36)が捕手のタッチをかいくぐり、左手でベースを触って勝利をたぐり寄せた。序盤は8点を追う展開も、ブラッシュの2発や浅村の本塁打などで同点に追いつき、延長で劇的サヨナラ。8点差逆転勝利は球団史上初という快挙だった。

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ベテランが必死のヘッドスライディングでタッチをかわした。11回裏1死一、三塁。ウィーラーの浅い右飛が飛んだ瞬間、三塁走者藤田へベースコーチから「ゴー!」の指示が出た。「そのままいったらアウト。最初から頭でいこうと思いました」。全速力で走り、ホームへヘッドスライディング。タイミングはアウトだったが、体を右にひねって左手を浮かしてタッチをかわし、相手のミットの上から左手を伸ばしてホームベースを触った。

セーフの判定に本拠地ファンは大歓声。直後に日本ハムからリクエストが出たが「タッチされていなかったからセーフの確信があった」という藤田の言葉通り、判定は覆らなかった。試合後には「あれでアウトになっていたらウィーラーに何を言われるか分からない。さっきもロッカーで『フジタ遅いよ』と言われました」と会心の笑みをみせた。

前日14日の日本ハム戦で通算1000安打を達成した。しかし守備では2失策を犯し、試合も1-13と大敗した。「ちょっとふがいない1日だったんで、昨日は心から喜べなかった。今日これでいい気分で移動できます」。充実感を漂わせて、東京ドームで開催される16日の同戦のために仙台を後にした。

この日は先発古川がつかまり、4回までに0-8とリードされた。それでも誰ひとりあきらめなかった。平石監督は「序盤に離された時に円陣を組もうと思ったんですけど、『まだまだこれから。いくぞ、いくぞ』といろいろな選手が口にしていた。必要がなかったからわざわざ(選手を)集めませんでした」という。

8日ソフトバンク戦では球団史上初の7点差逆転勝ち。そしてこの日は初めて8点差をひっくり返した。指揮官は藤田や嶋、渡辺直らについて「経験を積んでいる選手は良くも悪くも『今日の試合は厳しい』と試合を読んでしまう。でもウチのベテランたちにはそういうのがまったくない。常に声を出してくれて助かります」。あきらめない雰囲気をつくりだしている年長者たちをたたえた。【千葉修宏】