最強カープに、まだこんな投手がいたとは…。広島の2年目、山口翔投手(20)が、ヤクルト11回戦(神宮)で衝撃的な先発デビューを飾った。140キロ台後半の直球を中心に4球種を投げ分け、7回2死まで無安打無得点。同郷で同学年の村上に初安打を許したが、7回1安打無失点でプロ初勝利を挙げた。これで球団月間新記録の19勝目。好調投手陣に新たなローテーション投手が加わった。

山口が衝撃の先発デビューだ。ノーワインドアップから静かに体重移動し、しなやかに右腕を振り抜く。初回を伸びのある直球で3者凡退とし、リズムに乗った。3回1死から中村に四球を与えるまで完全投球。7回2死から村上に初安打を許すまでノーヒッター。スライダー、カーブ、フォークをちりばめ、7回を1安打無失点に抑えた。堂々のプロ初星だ。

「真っすぐが自分の武器。真っすぐで押すことができてよかった。野手のみなさんがたくさん打ってくれたんで、投げやすかった。たくさんの声援がめちゃくちゃ聞こえました。それが自分のパワーになりました」。球場の左半分を埋めた広島ファンの大声援に、バンザイした両手を何度も左右に振って応えた。

絶対に打たせたくない打者がいた。4番村上だ。同じ熊本出身の同学年。熊本工時代は九州学院の強打者として意識していたが、対戦機会はなかった。17年のドラフト指名後、そろって取材を受けた。プロで対戦したら? そんな質問に村上は「バックスクリーンに打ち込みます」と答えた。対抗心が湧いた。5月15日の初対戦は直球で空振り三振。村上がノーヒットを崩したのは皮肉だが、その他の打者を完璧に抑えれば文句はない。「村上は次、抑えます」と笑った。

この日の先発の選択肢は他にもあった。次カードで先発予定の床田を中5日で起用する手や、先発経験豊富な九里が中継ぎから回ることも可能だった。だが、指名されたのは先発未経験の山口。緒方監督は「大あっぱれ。秋のキャンプから期待していた投手の1人。ワンチャンスをものにした。2、3試合、任せてみようと思う」と先発ローテ入りを明言した。

5月は19勝4敗1分けとなり、1試合を残し月間勝ち星&月間貯金数のダブル新記録が確定した。投げてよし、打ってよし。首位を走る赤ヘルの勢いが止まらない。【村野森】