6月の第3日曜日は「父の日」。幼き頃に追いかけた父の背中、遠く離れて暮らす父への思い、そして感謝の気持ち。野球人たちが父親との濃厚な思い出を語った。

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オリックス伏見寅威捕手(29)には忘れられないシーンがある。父英俊さんは現役の中学体育教師。高校時代にはラグビーで花園出場経験もある。「寅威(とらい)」の名前もラグビーにあやかったもの。中学教師として、一からラグビー部を創設する熱血漢という。

「真剣に怒られたのは人生で1回だけ」と振り返ったのは、伏見が小学校の野球部で主将を務めていた時のことだ。

「『しっかりやらなきゃ』というのがあって、責任感をはき違えたことがあった。チームメートがフライばっかり上げていて、監督が『フライじゃなくてゴロを打て』と言っていて、自分が『何フライ上げてんだよ。ゴロ打てよ』って戻ってきた選手に偉そうに言ってしまった」

その試合後、父に呼び出された。

「その日結構打ったから褒められると思ったら『いいかげんにしろよ! お前はフライを上げないのか? いい気になってんじゃない。主将っていうのはそういうことじゃないぞ!』と言われて。小学生ながらに反省したね。忘れられない」

そこから伏見は一段と周囲への配慮に心を砕き、言葉遣いまで気を使うようになったという。

「あのタイミングで怒ってくれてよかった」

思い違いを指摘してくれた厳しさに感謝している。【古財稜明】