真っすぐ一本勝負に勝った。2点リードの3回1死。巨人岡本和真内野手は獲物が来るまでピクリともしなかった。

フォークボール、カットボール2球を見逃しカウント2-1。ど真ん中にきた149キロ直球にドンピシャで合わせた。「速い系に絞っていた。いろんな球種がある中で、うまくいい方向に打てました」。バックスクリーン右へ13号ソロをぶち込み、山本に天を仰がせた。

狙いがあった。昨季も2度対戦し2打数2安打1打点。2打席とも初球のカットボールを打ったが「中継ぎの頃は球種が少なかった」と先入観にとらわれなかった。今季から先発に転向し高速カット、フォーク、カーブと自在の相手に「真っすぐは速いイメージ。振り負けないように」と基本通りに直球と向き合った。

伏線もあった。第1打席、初球。体近くの内角153キロを見逃してボール。2球目。大きく外に外れたカットボールに見向きもしなかった。3球目。ストライクゾーンに来た150キロ直球に、おもむろにバットを出した。やや差し込まれたがしっかりとスイングした分、中前へ落ちた。「けっこうタイミングは悪くなかった」と第2打席で修正。原監督も「見事だと思いますね。あれだけのボールをあそこまで飛ばしているわけだから」と称賛した。

第3打席は互いの意地が見えた。変化球3球で3ボール。直球1本待ちで4球目を振ったが、山本も学び、カットボールを放った。岡本はフルスイング。遊ゴロに倒れ、今度は天を仰がされた。「いい投手でしたし、しっかり今後に生きてくると思う」。球界を席巻する若武者同士の戦いが、令和の名勝負への予感を漂わせた。【桑原幹久】