虎のキバは鋭いままだ。阪神が広島に逆転勝ちし、DeNAと同率3位に浮上した。5回にマルテの1発で追いつき、決勝打は金曜にめっぽう強い糸井嘉男外野手(37)だった。6回無死から連続バント安打の近本、糸原を置いて、決勝の2点適時二塁打を放った。首位巨人とは7・5ゲーム差のまま。優勝には球団史上最大の逆転劇が必要でも、不屈の戦いを続ける!

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虎の超人が鮮やかに決めた。1-1で迎えた6回無死一、二塁。3番糸井は2球で追い込まれながらも、冷静だった。広島大瀬良の3球目、外角148キロに逆らわずバットを合わせると、打球は左中間を真っ二つ。値千金の勝ち越し2点タイムリーだ。「いい投手であることは間違いない。最後は失投だと思うけど、打てて良かった。2人のランナーをかえせて良かった」。頼れる男がリーグ屈指の好投手を攻略した。

矢野野球が詰まった6回の攻撃だった。先頭近本が意表を突くセーフティーバントで出塁。2番糸原のバントもボールの処理を大瀬良、メヒアがお見合い。打った糸原は全力疾走で一塁を駆け抜けた。細かいプレーに積極走塁で作り出した好機に矢野監督も「細かい野球がタイガースの野球だと思うんで」とご満悦。最後は絶好調男が走者2人を迎え入れた。

糸井のバットから快音が止まらない。下半身のコンディショニング不良もあって春先に苦しんでいたが、交流戦に突入して急浮上。6月の月間打率はセ・リーグトップの3割5分4厘(79打数28安打)と打ちまくった。これでチームトップの7度目のV打。リーグ戦再開後も、その勢いは止まりそうにない。

オリックス時代の“恩師”から刺激を受けた。6月、交流戦中の福岡で33試合連続安打の日本記録を持つ高橋慶彦氏(62)と食事を共にする機会があった。16年には1軍打撃コーチに就任した同氏から熱血指導を受けて復活。前年に6年連続で続いていた打率3割台が途切れたが、16年シーズンは143試合に出場し、打率3割6厘を記録した。希代のヒットメーカーとの貴重な時間が、心が奮い立つ1つの要因になった。

チームは6月22日西武戦以来、13日ぶりとなる甲子園勝利。DeNAと並び同率3位に浮上したが、首位巨人とは7・5ゲーム差と厳しい状況は変わらない。序盤には守備のミスが目立つ展開に矢野監督も「スッキリした形の勝ちではない」と、しつつ「僕の好きな言葉で『雲の上はいつも青空』というね。なかなかスッキリした勝ち方ではないかもしれないですけど、その青空があると信じて、また引き寄せられるような試合を」と前を向く。糸井は「ちょっと負けが込んでるんで、明日からも勝てるように必死でやっていきます」と宣言。勝負の夏はまだこれからだ。【桝井聡】