阪神が伝統の一戦で屈辱的な大敗を喫し、再び自力Vが消滅した。先発岩田稔投手(35)が初回7失点の大乱調も中継ぎ陣の登板過多で3回まで引っ張らざるを得ず、その後投入した飯田、浜地、高野の3投手も全員打ち込まれた。巨人戦の満塁被弾2本は球団初で16失点も今季ワースト。首位を3連倒して6・5差に迫り、セ・リーグを面白くしたかっただけに矢野燿大監督(50)もがっくりだ。

   ◇   ◇   ◇

巨人ファンの凱歌が背後から突き刺さる。大敗後、35歳の岩田が責任を一身に受け止めた。東京ドームの階段を上る足取りは重い。「自分をコントロールすることができなかった。ただただ情けない。チームが連勝していた流れを止めてしまって申し訳ない」。中11日の先発は、今季安定していた立ち上がりに失敗。大誤算の初回7失点で早くも勝負は決まってしまった。

プレーボールから27分後の悪夢だった。1回、先制したがすぐに同点と戻され岡本への押し出し四球で勝ち越されて、なおも1死満塁。梅野は内角に構えたが速球は外寄りへ。ゲレーロに逆球を強振されるとバックスクリーン左に届く。痛恨の満塁被弾…。矢野監督も白旗を揚げるしかない。

「よーいどんで7点。しんどすぎた。2つ取ったからこそ今日はウチとしては何としても取りたい試合。あれだけいかれるとね…。なかなか打者も『いくぞ』という形にはなりにくい。その後、また2点取られたんかな。しんどかったね」

前夜は7投手で継投する延長戦を制していた。最近は救援陣をフル回転させ、なるべく温存したい事情がある。岩田は1回に7点を失ったが不用意にリリーフをつぎ込めない。指揮官は「難しいよ」と嘆く。岩田を今季最短の3回9失点であきらめても、まだ仕打ちが待っていた。飯田が2点を失い、浜地もつかまる。6回、炭谷に満塁アーチを浴びた。巨人戦で1試合2発の満塁本塁打を献上するのは、球団史上初めてだ。G戦16失点も01年以来、18年ぶり…。再び自力優勝の可能性が消えてしまい、歴史的な屈辱大敗になった。

7月は8勝11敗1分けで2カ月連続の月間負け越しも決まった。指揮官は「どうしようもない。打つのを待つしかないし、あれだけ点数がある。策って何もできるわけじゃないからさ」とお手上げの黒星だった。不振のメッセンジャーが前日27日に米国へ帰国。先発陣が手薄になり、岩田は次回も先発する方向だ。悔しさをバネにはい上がるしかない。【酒井俊作】

▽阪神福原投手コーチ(岩田について)「コントロールに苦しんだ。自分の投球が出来ていなかった」

▽阪神金村投手コーチ(岩田について)「今日は苦しかったけど、次のカードのことを考えても岩田は必要な戦力。切り替えてやってもらうしかない」

▼阪神の1試合16失点は今季最悪で、14年9月13日広島戦17失点以来、5シーズンぶり。なお巨人戦に限れば01年3月30日17失点以来18年ぶりで、球団史上単独ワースト4位。

▼阪神の1回の1イニング7失点は、5月17日の広島戦9回、6月8日の日本ハム戦7回の各7失点と並び、今季最多。巨人戦での1イニング7失点は、15年8月19日5回の12失点以来。初回の7失点は、16年8月30日中日戦7失点以来。巨人戦に限ると、98年4月25日の1回表9失点以来、21年ぶりの屈辱となった。