巨人原辰徳監督(61)が、9連勝中だった宿敵広島を破り、史上13人目の監督通算1000勝を達成した。巨人一筋では川上哲治氏(1066勝)、長嶋茂雄氏(1034勝)に次いで3人目で、12年の楽天星野仙一氏以来となる大台到達。対広島の連敗を3で止め、2位DeNAとは4・5ゲーム差。次世代を担う後継者の育成も視野に入れながら、5年ぶりの優勝へ向けて首位を快走する。

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試合中、真一文字に結んでいた口元をようやく緩めた。原監督が本拠地に響く「タツノリコール」の中、14年リーグ優勝以来のお立ち台に立った。初めて監督に就任した02年は、3連敗からのスタート。「1つ勝つ重み、大変さを最初にたたきこまれた。その後は朝になれば今日どうやって勝つか。夜になれば明日どうやって勝つか。それしかない」と言った。

自身のメモリアル勝利より1つの白星に執着した。2点差に迫られた8回無死一、二塁から3打点のゲレーロに代打重信を送る。打席に向かう前、耳元で狙いをささやき、暴投を誘った。犠飛で1点を奪い「常に最善策。ベンチ全員で戦う。それが原点」。局面を動かし、勝利を決定付けた。

初勝利から、17年でたどり着いた大台。還暦で迎えた3度目の監督就任は、4年連続V逸したチーム再建を託された。編成面の責任も担い、勝つだけではない使命を胸に秘める。

「85年の歴史の中でOB以外は監督になっていない。いい形で、いい監督につなげるのは頭の中にはあります。時代はいつか滅びる。でも巨人軍は滅びるわけにはいかない」。原監督自身、ヘッドコーチとして長嶋監督に英才教育を受けた。高橋前監督には現役の終盤、選手の立場で紅白戦の采配を託したことがある。

3月29日、マツダスタジアムでの開幕戦前の打撃練習中、40歳の阿部を呼び寄せた。「ベンチにいる時は、お前さんが監督のつもりで試合を見ていなさい」。采配、用兵、決断…、コーチを含め、次世代のリーダー候補に惜しみなく経験を伝えながら戦う。

2月16日の対外試合初戦から丸、坂本勇ら主力を起用。「ポジションはつかむもの」とオープン戦でも若手主体のスタートはない。徹底した実力至上主義の中、若林、大城、山本、投手では桜井、中川らが台頭。93試合で77通りの打線を組み、首位に立つ。

試合後は全選手が1000勝のTシャツを着るサプライズで祝福された。「目的は明日の勝利。それしかない」と喜びに浸るつもりはない。この日の勝利は巨人の通算5975勝目に重なる。自身の記録より、6000勝、7000勝…のために。チームの未来を見据えながら、目の前の勝負に徹し、5年ぶりの歓喜を追い求める。【前田祐輔】