鯉がまたセ界頂点返り咲きへ、歩を進めた。広島野村祐輔投手(30)が強力DeNA打線に対し、攻撃的な投球でほぼ完璧な投球をみせた。1安打無四球で自身3連勝。2位DeNAとの3連戦を勝ち越しに導いた。DeNAとは0・5ゲー0差、首位巨人とは1・5ゲーム差だ。前半戦苦しんだ右腕が、チームの反攻の旗手となる。

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まだ気温は30度を計測していた。大粒の汗を飛ばしながら投げた104球で、野村は復活を印象づけた。最速は144キロも、押した。強打者のそろうDeNA打線にも攻めの投球で無四球。8回まで1安打に抑え、9連戦最初のカードを勝ち越しでスタートさせた。

左足を上げ、軸足となる左股関節に重心を置くようにひねる。そこから全部の力を指先に集中する。力の伝わり方、放たれた白球のうなり、そして打者の反応に、野村は手応えを得た。140キロ超は22球しかなかった。それでも「真っすぐが良かった。差し込むこともできたと思う」。チェンジアップ、カーブで緩急を使い、スライダーでバットを振らせた。ゴロを打たせて取るタイプながら、9つのフライアウトを重ねた。

2軍での日々が生きた。6月12日に出場選手登録を抹消され、約1カ月半、自分自身を見つめ直した。キャッチボールやトレーニングの中で体の使い方の変化を感じ取った。「常日ごろから意識しているので気づくことができる」。常にキャッチボールのときには下半身主導を意識するため左手の反動は使わないなど、日々の積み重ねが調子を取り戻させた。

この日も広島は暑かった。だが右腕は「涼しかったです。風があったんですよ」と笑った。中5日が見込まれる次回登板を考慮してか、9回のマウンドには上がらなかったが、それでも自身3連勝。真夏の苦しい時期に、反攻するチームの歯車となっている。

緒方監督も後半戦のキーマンに挙げた右腕の力投を大絶賛した。「祐輔の投球に尽きるでしょう。先発の仕事として100点満点の仕事をしてくれた」。2位DeNAに0・5ゲーム差。チームとともに復調した右腕だが、足元を見つめる。「まだ取り返さないといけないと思っている。1つも落とせないと思ってやっていきたい」。野村も、チームもまだ何も手にしていない。視線はその先を見据えている。【前原淳】

広島会沢(野村について)「良かったですよ。真っすぐも良かったですし、全部良かった」

広島佐々岡投手コーチ「ブルペンから良かったものをそのままマウンドでも出してくれた。真っすぐが強く切れもあったので、他の球種が生きた」