日本ハムは2018年で北海道移転15年。過去の名場面、珍場面を、当時の紙面とともに振り返ります。

<12年2月9日付>

衝撃のデビューだった。前年秋のドラフト会議で早大ソフトボール部から入団した日本ハム大嶋が、紅白戦での実戦初打席、初スイングで、バックスクリーン直撃の初本塁打を放った。「ストレートに絞っていました」。狙い通りの直球…とはいえ、慣れ親しんだソフトボールは直径9・7センチの大きさ。対する野球は7・3センチほど。投手の植村も、開幕1軍を目指した大事なマウンドで、そう簡単に柵越えできるようなものではない。

キャンプイン前の自主トレ中、大嶋は「打球が上がらないんです」と悩んでいた。「ソフトボールではバットとボールをぶつけるように振れば飛んだんですけど、野球ではそれじゃダメですね」。スイング軌道を見直し、タイミングを取るために上げていた右足をすり足にするなど、試行錯誤していた。異種競技からの挑戦。デビュー打席での好結果は、野球への適応能力、ポテンシャルの高さを示した。

プロに7年間在籍し、16年にはヤクルト戦で右中間への二塁打を放って初安打も記録した。18年に現役を引退するまで、20打席に立ち、3安打をマーク。2軍施設の千葉・鎌ケ谷で黙々と練習に打ち込む姿は、チームメートにも影響を与えた。長い球界の歴史のなかでも、ソフトボールから転身したのは大嶋ただひとり。高校野球や大学野球で輝かしい功績があっても、まったく結果が出せずに球界を去っていく選手がいるのがプロの世界。大嶋は偉大な足跡を残し、第2の人生へステップアップしていった。