楽天ルシアノ・フェルナンド外野手(27)が、日本ハム戦で2安打4打点と大暴れし、勝利に導いた。ブラジル生まれ日本育ちの男は昨オフに支配下から育成再契約。今年7月31日に支配下復帰を果たした苦労人。21日に1軍昇格を果たすと、少ないチャンスで結果を残してきた。起用された試合では4戦連続安打。負ければ5月17日以来の借金生活に突入する危機を救った。

   ◇   ◇   ◇

陽気な男の目から、光るしずくがこぼれた。お立ち台に上がったフェルナンドが、これまでの苦労を問われると思わず目頭をぬぐった。「5年間で(お立ち台が)初めてなんで…」。頭の中に駆けめぐった日々が少しだけ涙腺を緩ませた。

心は熱くとも、頭は冷静に打席に入った。4回1死満塁。「真っすぐが強い投手。振り負けないように」と狙いを明確に、マウンドをにらむ。カウント1-1からの3球目。日本ハム北浦の浮いた140キロ直球を待っていた。振り抜いた打球は左翼手の頭上を越えた。走者一掃の3点適時二塁打。「浮いた球を冷静に打てました」と二塁上で控えめに右手を上げた。6回にも適時打を放ち、2安打4打点と大暴れだった。

執念を両手に宿していた。14年にドラフト4位で入団も、昨オフに自由契約から育成契約。ファームでチーム最多の13本塁打を放つなど、結果を積み重ねて支配下登録期限最終日の7月31日に2ケタ背番号復帰を勝ち取った。「去年ケガして、これからどうしようと考えて…育成になってチャンスは少なくなる中で、どう結果を出すか。支配下を勝ち取っても、1軍に行ってまた結果を出さないと。2段階、3段階と(壁が)あった」と振り返る。それでも心は折れなかった。「これと決めたことを貫いた結果」と思い切りバットを振り回してきた。

だからこそ、止まるつもりはない。2軍時代から指導する平石監督は「必死さは伝わる。働きは見事」とほめたが「まだまだこれからが大事」と引き締める。フェルナンドも「監督にファームで2年間お世話になって、自分はまだ、そんな選手じゃないけど一緒にCSに出たい。何でもいいんで、チームに貢献したい。1軍の選手に食らいついていきたい」と言葉に力を込めた。入団時から家で歯のホワイトニングシールを貼るなど、歯にはこだわりを持つ男。次は涙の代わりに、お立ち台で白い歯をこぼしてみせる。【島根純】