リーグ王者の巨人が1枚も2枚も上手だった。奇跡的な粘りを見せてきた阪神の19年が終わった。接戦に持ち込んだが力負け。

矢野燿大監督(50)は悔しさを押し殺しながら、さばさばした表情で総括した。

「ウチらしい、あきらめないとか、戦う姿勢とかはしっかりやってくれた。楽しかったね。毎日こういう中で野球をできるのもそう。こういう試合を続けることでチームとして成長できた部分は大きいと思う」

同点だった6回の攻防が命運を分けた。1点を巡るしのぎ合いだ。無死一、二塁の好機を築いたが、大竹にマルテが三ゴロ。大山、梅野は内角シュートを意識するあまり、ともに外角スライダーに空を切って、勝ち越せない。直後の2死三塁で丸を迎えた。初球だ。今季27本塁打の強打者が不意にバントを試み、西の前に転がす。意表を突かれた西が一塁送球も、それる。セーフティースクイズが決勝点…。課題の打線がわずか2安打に終わる中、試合巧者ぶりを見せつけられた。宿敵に完敗し、ファイナルステージで敗退。矢野監督は続ける。

「俺らの目指すところはもっと上にあるけど、現在地が分かった。ここに来られた意味はすごくあった」

ファーストステージでDeNAを撃破し、巨人に挑んだが、1勝3敗に終わった。攻めの継投など死力を振り絞ったが潔く散った。常勝チームの条件に肌で触れ、指揮官も前を向いた。

「ジャイアンツは全然違う戦い方。俺らはまだまだ強いチームじゃない。でも、どうやったらこの強いジャイアンツに勝てるか。ウチの戦い方はあると思う。同じような戦い方はなかなかできないかもしれない。見えた部分も多かった」

今季、12球団トップのチーム防御率3・46を誇る投手陣を中心に戦った。対照的に公式戦は打線が振るわず苦戦したが、最後に6連勝して逆転CS進出。DeNA戦も最大6点差逆転など、逆境でのしぶとい攻撃で見る者の心を打った。矢野監督は「俺は常に気持ちのことを言ってきた。負けられない戦いのなかでチームが1つになって戦えたのは一番、手応えを感じている」と振り返る。矢野阪神1年目が終戦した。悔しさは来季にぶつければいい。今はただ、胸を張って関西に帰ろう。【酒井俊作】