阪神は今季、矢野燿大新監督(50)が指揮を執り、最下位からの立て直しを図った。シーズン最終盤の劇的な6連勝で貯金1の3位に滑り込んだが、優勝は14年連続で逃した。来季こそ優勝するための課題、収穫はどこにあるのか。1年間密着取材してきた阪神取材班が、~矢野阪神1年目検証~「光と影」と題した連載で検証する。第1回は外れることが多い外国人野手補強をクローズアップした。

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善戦及ばず、矢野阪神がCSのファイナルステージで敗退した。王者巨人に完敗。長打あり、小技ありの試合巧者ぶりに屈した。矢野監督は「トータル的に豪快な野球ももちろんそうだし、でも、細かい野球も、バランスがすごくいいチーム」と評した。岡本、丸、ゲレーロ…。一発のダメージは大きく、敗れ去った。

若手の成長を重視するチーム方針があり、近年、攻撃は未知数の外国人に委ねざるを得ないのが現状だ。CSで4番マルテが不振。打率7分1厘のノーアーチに終わり、巨人とは対照的に破壊力不足が浮き彫りになった。またも外国人野手に失敗した。象徴は「ソラーテ騒動」だ。9月6日広島戦。2軍から招集したが練習に姿はなく、1軍昇格も見送られていた。球団広報が説明する。「本人の方からモチベーションが上がらないとのことで帰阪させました」。CS圏内の3位広島と2・5ゲーム差の直接対決を前に職場放棄…。前代未聞の造反劇だった。

なぜ、ソラーテは参戦拒否したのか。球団関係者は「本人はスタメンだと思っていた。レギュラー扱いじゃなかった」と明かす。昨季まで大リーグで5年連続2桁本塁打など通算75本塁打だった。メジャーリーガーのプライドが傷ついた。

阪神の渉外は、また同じことを繰り返した。現場のニーズとの不一致、リサーチ不足…。貧打を解消すべく、国内他球団で出番がない外国人の獲得も検討したが7月にソラーテを緊急補強。だが、最初から破綻していた。現場は外野手を希望していたという。別の球団関係者は「来てみれば内野が本職のソラーテ。そこからボタンの掛け違いが起こっていたんじゃないか」と話す。一塁にはマルテ、三塁には大山がいる。デビュー戦が遊撃で、2戦目が左翼。二塁でも起用されたが守備位置はめまぐるしく変わった。しかもボーンヘッドの失策を連発して打撃に影響を及ぼした。目も当てられない悪循環だった。

守備の弱さは織り込み済みだったのか。同じくソラーテを調査していた他球団の首脳は「打撃はいいけど、あの守備はまずい。ウチは見送った」と言う。職場放棄したソラーテは論外だが気の毒な一面もあった。2軍関係者が「1軍でいろんなポジションをやらされて本人は戸惑っていた」と代弁。ソラーテ自身も周囲に「もう1軍には行きたくない」と漏らしたという。もう、心は離れていた。

強化を推し進める若手の「枠」を奪ってまでシーズン途中に助っ人野手を獲得して失敗。ロジャース、ナバーロ…。何度も見た光景だ。球団関係者は「すべてが中途半端。育てにいくのか、補強でいくのか」と指摘する。チームの強化方針が一貫しない上に補強ポイントとズレる。来日1年目のマルテも大砲の触れ込みだったが長打力不足を露呈した。打率は2割8分4厘だが12本塁打。パワー自慢の他球団助っ人に比べて物足りない。来季残留の方向だが、元阪神マートンのような中距離打者だ。誰もが望む大砲ではなかった。

チーム総得点はリーグ最少の538得点で、チーム最多本塁打は大山の14本だった。来季、覇権奪回するためにスラッガーの加入は欠かせない。今季で退団する鳥谷の推定年俸4億円と引退したメッセンジャーの3億5000万円が宙に浮く。ゆとりの出る資金も生かして大物打ちの補強を模索する。また、外国人野手獲得で長年、同じ失敗を繰り返す、国際スカウティング部門のあり方を見直すべきだ。【阪神取材班】

▼阪神は今季も外国人野手が期待外れの活躍に終わった。新加入のマルテは12本塁打どまりで、2年目のナバーロはわずか15試合の出場。さらに途中加入のソラーテは1軍昇格を拒否して契約を解除された。近年の阪神の助っ人野手で、成功したといえるのは、10~15年の6年間プレーし、首位打者や最多安打のタイトルを獲得したマートン、3年間で65発の本塁打を放ったゴメスら少数だ。20本塁打以上を記録した助っ人野手も16年ゴメス(22本)以来、出ていない。