ソフトバンク選手会長の柳田悠岐外野手(31)が3年連続日本一の歓喜に酔った。マウンド上の輪に入ると、工藤監督が駆け足で抱きついてきた。「一番に来てくれてうれしいですね。最高のチームメートに恵まれたと思いました」。今季は4月から左膝裏痛で約4カ月半の離脱。涙も流すほど悔しさを味わったシーズンだったが、最後に満開の笑顔になれた。

長く辛かったリハビリ。心の支えになった1つがアニメ「スラムダンク」だった。「筑後への行き帰りで毎日2時間。すぐに見終わるよ」。100話を超える大作もあっという間だった。お気に入りは主人公の桜木花道。くしくも同じ身長188センチでひたむきに成長する元気印に心を奪われた。8月に実戦復帰すると「治るかどうか分からない不安がありました。4カ月間を思い出した」と涙が出た。“野球がしたいです”。ため込んだ思いが名場面に重なった。

西武とのCSファイナル初戦。試合前のベンチ裏に「ハッピーバースデー」の声が響いた。柳田の31歳誕生日。球場の計らいでケーキが用意されたが、口にはしなかった。「だって、太るでしょ」。思うように動けなかったリハビリ中、102キロまで増えた体重は今94キロまで減った。「ラーメン食ったら走る」。意識的にランニング量を増やし、失った時間を取り戻そうと必死に練習に励んだ。

今年は仲間に連れてきてもらった日本一だ。「自分のことよりチームの勝利」と願う男は幸せをかみしめながら、20年の巻き返しに目を向けているだろう。【山本大地】