「星野流リポート」で覇権奪回 !!  阪神矢野燿大監督(50)が31日から始まる高知・安芸秋季キャンプの参加選手に「やる気リポート」の提出を義務づけていることが28日、分かった。キャンプ前に個々の課題を明確化し、首脳陣と共有する狙いがある。星野監督も03年春季キャンプ前に課して18年ぶりのリーグ優勝につなげた。ペンを走らせてVへの土台を築く。この日で甲子園での秋季練習を打ち上げた。

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矢野阪神は闘将イズムでV奪回への第1歩を刻む。秋季キャンプ参加メンバー34人に「やる気リポート」の提出を課し、31日のキャンプインまでに首脳陣が目を通すことになった。矢野監督がその狙いを説明する。

「いつも俺が言う自主性という部分でも自分がどうしたいかを、自分でも分かっておくのと、こっちも分かっておきたいのと、また(選手と首脳陣で認識の)ズレも出てくる。そこは話し合って決めていける」

今季は最終盤の6連勝締めでAクラスに入ったが、指揮官に慢心はない。「まだ強いチームではない」。この日で秋季練習を終了。野手はスローボール打ちのフリー打撃やロングティー打撃などで心身を整えた。「予定通り。やれることやって高知へ行ける」。そう語った上で指揮官は3日後に迫ったキャンプのテーマを明かした。

「より個々のレベルを上げていくのが秋のキャンプになる。自分がどうやったら試合に出られるか、どうやったらレギュラーになれるかを目指してやっていく」

矢野監督は1年間通して自主性を促してきた。強制ではなく、個々が自発的に目的意識を持つ大切さを説く。課題をはっきりさせるためにもリポートで思考を整理させる。「自分がどうしたいか、当たり前だけど考えていかないと書けない」。選手と指導陣で共有し、練習メニューなどに反映させたい狙いもある。

指揮官は「去年もやってるんちゃう?」と記憶をたどる。実は師と慕い、18年1月に急逝した星野仙一氏も阪神監督当時、採り入れた方法だ。01年の就任直後、首脳陣や選手に「チーム再建論」のリポート提出を命じた。03年春季キャンプ前も「個々のテーマ」をお題にナインの記入をうながした。練習メニューに反映させ、18年ぶり優勝の土台作りに成功した。当時、正捕手だった矢野監督の方策は「星野流」そのものだ。

明日30日に高知入りし、31日から20年の挑戦がスタートする。15年ぶりの栄冠に向けて、まずは頭から汗をかく。【酒井俊作】

◆星野監督が求めた「再建リポート」 01年オフに就任した、前中日の星野仙一新監督は同年12月、コーチ全員に再建策を書くよう求めた。02年1月には、全選手に猛虎再建リポートの執筆を指示。さらには担当記者にまで同じ内容のリポート提出を依頼した。読み込んだ星野監督は「タイガースに関する最高の文章を読ませてもらった。中身が濃かった」と決意を新たにした。チームを把握した02年オフには、選手に対し「個々のテーマ設定」を書くよう厳命。弱点を克服するためにどういう練習が必要か考えるよう求め、03年のリーグ優勝へとつなげた。