侍ジャパン先発の高橋礼投手(24)が6回1安打無失点と好投。スーパーラウンド進出に貢献した。

日本には何隻にもわたり、世界の海を縦横無尽に航海したサブマリンがいる。

最初にして、現在まで唯一無二のオリンピック(五輪)金メダル。84年ロス五輪の胴上げ投手は下手投げだった。吉田幸夫氏(61=阪急阪神第一ホテルグループの第一ホテル両国社長)は当時は世界で今よりもさらに希少価値のある投法だった。「他の国であまり見なかったが五輪後はアジアで韓国、台湾と増えた。メジャーの投手も190センチ以上あるのに横から投げるようになった」。日本式が伝播していった。

吉田氏をプリンスホテルで指導していたのが当時監督で代表監督も務めた石山建一氏(77)だった。世界最強とうたわれたキューバ遠征にも出掛け、下手投げの有効性を実感していた。

後に栃木のゴルフ場である人物に聞かれた。「息子が下手投げ投手で、どうしたらいいですか?」。経験談をもとに答えた。「下手投げが外角を狙っちゃダメ。打者の目が(横への軌道に)ついていける。下から、かち上げて角度をつけて。目線を上げさせて、次に下げさせれば、ついていけない」。その父は愛息に伝えた。後にプロ入りし、代表でも活躍した渡辺俊介だ。

高橋礼は中3で転向した。球界に少なくなったサブマリンの系譜をつなぐことが目標だ。13、17年WBCで活躍した牧田和久に憧れた。そして大学時代にカーブを教わったのは、昭和から平成へと系譜をつないだ渡辺だった。「国際大会でも重宝されますし、昔は『チームに1人ずつはいた』と言われていた。プロで活躍するアンダースローがもっと出てきてほしい」。令和へのバトンタッチを高橋礼が先人から継ぐ。【広重竜太郎】