虎のスピードスターよ、桐生になれ!

阪神近本光司外野手(25)が19日、兵庫・西宮市の鳴尾浜球場で陸上男子200メートル障害の元アジア最高記録保持者・秋本真吾氏(37)からマンツーマン指導を受けた。走塁時の足の回転数アップに着手。陸上男子100メートルで日本人初の9秒台を記録した桐生祥秀(24=日本生命)の数値を目指す。

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昼下がりの鳴尾浜で、近本が「走力革命」に着手した。阪神ナインの走塁面の特別講師である秋本氏が訪問。昨年の新人合同自主トレ以来、1年ぶりの再会でマンツーマン指導を直訴した。タブレットの録画機能を使いながら、ランニングフォームを確認。35分間、意見を交換し、昨年のセ・リーグ盗塁王は「有意義な時間だった」と満足げだった。

2年目のさらなる進化へ、秋本氏が着目したのが、足の回転数だ。「塁間の距離を考えると、歩幅を出しすぎると逆にマイナスになる。回転数がカギを握っている」。昨シーズンの近本の盗塁映像を見て、「走り方が崩れていた」と鋭く指摘した。この日はさっそく60センチ間隔でマーカーコーンを4個並べ、スタート時のストライドを短くする矯正練習を行った。

同氏は最初の4歩を重要視する。「盗塁は4歩目からスピードに乗ってくる。4歩目までが加速に乗るまでに大事」と意図を説明。近本も「めちゃくちゃ、よかったです。回転数は今まで意識していなかった。何が正解で何が間違っているかが全然分からなかったので、それが今日、ちゃんとコミュニケーションを取れた」と好感触を得た。

目指すは、野球界の「ジェット」だ。陸上男子100メートルで、日本人初の9秒台をたたき出した桐生の場合、100メートル走でトップスピードに乗るまで、1秒あたりの足の回転数は最大で約5回。塁間に置き換えると、毎秒4・5~4・7回になる。近本の場合は毎秒で4・1回。秋本氏は「回転数が上がる感覚を定着させれば、まだまだ(盗塁数は)増やせるし、速度も上がる」という。ストライドも、近本は2メートルを超えていたが、10~20センチほど縮めた。「今日はそこも修正した」と振り返る。

2年連続盗塁王を目標に掲げる近本にとって、専門家によるサポートは力強い。「今後の盗塁にしっかりつなげたいし、継続的にやっていく」。今後もSNSなどで、秋本氏と連絡を取っていく予定。1年目の実績に甘えることなく、今季は異次元の走りを見せる。【只松憲】