阪神藤川球児投手(39)が10日、沖縄・宜野座キャンプで初めて打撃投手を務め、圧巻のキレキレ仕上げを披露した。

メジャー92本塁打のジャスティン・ボーア内野手(31=エンゼルス)、昨季韓国打点王のジェリー・サンズ外野手(32=韓国キウム)、福留、マルテ相手に30球を投じ、安打性は1本に抑える快刀乱麻だ。久保田智之プロスカウト(39)、ジェフ・ウィリアムス駐米スカウト(47)との「JFK」3ショットも13年ぶりに実現。盟友の思いを胸に、日米通算250セーブと日本一を目指す。

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藤川の浮き上がる直球に、新助っ人たちは手が出ない。振り遅れたバットは何度も空を切った。「ライズボール! ライズボール!」。2打席対戦したサンズは興奮気味に繰り返した。マウンドに仁王立ちした守護神が、実績十分の新外国人勢を圧倒するキレキレ仕上げを披露した。

サンズはファウルで2球詰まらされ、5球目の直球を空振り。続くボーアも前に飛ばすことができなかった。サンズが「伸び上がってくる」と驚けば、メジャー92本塁打のボーアも「ヒーイズ、グレート! 伸びててキレもいいね」と目を丸くして絶賛。福留、マルテら中軸候補の4人に30球を投じ、安打性の当たりはサンズの2打席目で出た中前打だけに抑え込んだ。

藤川も充実の汗を拭った。「2月10日の段階でバッティングピッチャーに入ることは普段なかったけど、今日した段階では、十分にいけるなと」。今年は東京オリンピック(五輪)の影響で開幕が早まり、今年40歳のベテランも超速仕上げ。絶好の腕試しで身内の主砲たちを圧倒し、一層の手応えをつかんだ。

うれしい再会もあった。午後1時過ぎのブルペン付近。藤川と久保田プロスカウト、新外国人のサポートで来日中のウィリアムス駐米スカウトが勢ぞろいした。「特別な思いと思い出もありますし、久保田とさっき話したんですけど、思い出をもう語るような年齢になってきたなと」。「JFK」の3人がそろって記念撮影するのは07年3月31日のお立ち台以来13年ぶり。05年のリーグ優勝に貢献した鉄壁のリリーフ陣の再結成で、心は新たになった。

「人生を送る上ですごく大事な瞬間だった。自分の積み重ねてきた数字であったりセーブ数というのも、彼ら2人がいて、他にも選手がいて、なんとか自分までつながって、いろんな人の思いが乗っている」。

矢野監督は改めて断言した。「現状、球児の抑えというのは僕の中では決めている」。バッテリーで苦楽をともにした指揮官に、藤川も独自の表現で優勝を誓った。「監督を守る力強い盾であり、攻撃する武器であるためにと思っている。監督が使いやすいように、そういう駒になれるように」。かつての盟友の思いを胸に、日本一を目指す理由がまた増えた。【磯綾乃】

▽阪神福原投手コーチ(藤川について)「順調にきている。いろいろ考えてやってくれている。何も言うことはない。(今後の実戦は)ちょっとずつ入ってくると思う」

<藤川の打撃投手内容(オール真っすぐ30球)>

◆サンズ

ボール、ファウル、ボール、ファウル、空振り三振

◆ボーア

ボール、ファウル、空振り、ファウル、ボール

◆マルテ

中飛、見逃し、ボール、ファウル、ファウル、空振り三振

◆福留

ファウル、ファウル、ボール、ファウル、左飛、ボール、ファウル

◆サンズ

見逃し、ファウル、中前打、中飛、見逃し、見逃し、ファウル