阪神、日本ハム、メジャーでプレーし、14年ぶりの日本球界復帰を目指す新庄剛志氏(48)が19日、引退後初となる連載『みなさん、夢はあるかい!?』の第3回で、北海道初の独立リーグ「北海道ベースボールリーグ」からのオファーに対して断りを入れたことを明かした。野村克也監督との出会い、外野手でビッグプレーを連発した秘話を語った。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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バリ島に住み着いてからエアブラシアート(※1)に夢中になった。おれ、絵もうまいんですよ。自分の心境をキャンバスに表現する。海が荒れてて、1人で地平線をみながらポツンと立ってる。目の前に広がる海の上空に虹を描くって感じですかね。

モトクロスにも乗ってました。いろんなことがあってスカッとしたかった。でも絵も、バイクもやめた。切り替え早いほうなんでね。日本球界に復帰したいと言ってから、いろんなところで話題にしてくれるのはありがたいです。もう「あの人は今…」でしょ。

北海道に初めて誕生した独立リーグさん(※2)からもお話をいただきました。ありがとうございます。でも、すぐお断りしました。「ムリオちゃんです(無理という意味)」。今はNPBしか頭にないのよ。でも逆に「頑張ってください」と励まされました。北海道の人って、あったかいだべさ~。

プロ野球人生の出発点は阪神です。野村(克也)監督だった99年は投手もやった。おれから持ち出したというのは報道のウソです。監督から「やってみるか?」って。それとミーティングが長い。「小学校の授業時間にあわせてください」って言いました。

ただ、甲子園は一番守りやすかったね。外野手で「ゴールデングラブ賞」を10回いただきました。たまに知り合いが送ってくる日本の映像をみると、外野手のレベルは高くないね。おれは打球がくる前に動いたから抜けるような当たりも捕ることができた。

普通の野手は、グラブの内側にある“ポケット”(※3)は1つだけど、おれは3つのポケットを作ってた。だってダイブや、スライディングしたりで、どんな体勢で打球を捕るかわからないでしょ。だからポケットの数を増やしてたんです。

日本ハム時代は、日本一と同時に引退だから、アニメの世界ですよ。おれってもってますね。小さい頃は8度も交通事故にあったけど助かった。ニューヨークメッツにいたときに起きた同時多発テロ事件(※4)の前日は、現場の銀行に行ったばかりだったしね。

今は必死に取り組んでます。なにごとも成功を果たすには、自分を超えた不思議な力が働くと思ってるんです。それと運かな。みなさん、なにか夢中になってることってありますか? あしたは球児たちの甲子園について話してみようじゃないの。

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※1 霧状に塗料を噴射する絵画器具で描く芸術。新庄氏は09年に札幌ドームでエアブラシアート展を開催している。

※2 「北海道ベースボールリーグ」(HBL)は、富良野、美唄の2チームで今春スタート予定も新型コロナの影響で延期していたが、今月30日に開幕することが決まった。21年度から石狩市、22年度以降に砂川市の2球団も参入予定。

※3 捕球しやすくするためにグラブに作る空間のこと。グラブハンマーなどで型を付ける。

※4 01年9月11日、旅客機2機がニューヨークの世界貿易センタービルに突入。ワシントン郊外の国防総省に1機が突っ込んだほか、ペンシルベニア州には1機が墜落し、約3000人の死者が出た。