新型コロナウイルス感染から回復した元近鉄、日本ハム、楽天監督の梨田昌孝氏(66=日刊スポーツ評論家)が26日、本紙のインタビューに応じ、50日間に及んだ闘病生活を振り返った。生命にかかわる危機を告白。奇跡の生還を果たし、プロ野球開幕に向けて社会復帰に強い意欲を示した。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

-徐々に容体が良くなって人工呼吸器の装着を外しました。意識が戻ったのはどの時点ですか

梨田氏 どの時点かはわかりません。人工呼吸器が結構深く入っていた気がするんですが、すごい気持ち悪さがあった。管を口から抜かれたときは「オエーッ」としましたが、ふわーっと、なんとなく生きてるんだと感じた瞬間でした。それもうろ覚えですけどね。

-その後はどのような様子でしたか

梨田氏 生きてる感覚はあったが、なかなか水を飲ませてもらえない。高熱で水が飲みたくてしょうがないんですが、一気に飲むと、むせたりして食道、肺に入るのが危険みたい。のどが渇いてうなされ、何百回も「水を飲ませてください」とお願いする夢をみました。せきがでて、たん、つばがでても絶対飲み込んではダメ、全部外に出してくださいと言われました。

-ICUをでて一般病棟に移ったのは入院から18日経過した4月17日です。

梨田氏 すごくうれしかったです。でも、なんて言うんでしょうか…。入院してる間に、志村けんさん、岡江久美子さん、岡本行夫さんら著名人、大相撲の勝武士さんが亡くなったことを知りました。そういうのがあって「おれはこれでいいのかな…」と複雑な思いはありました。

-一命を取り留めたといっても、すぐに前向きにはなれなかった?

梨田氏 そうですね。ただそこは先生方が「これだけ重症で助かったのは、梨田さんがこれから果たさなきゃいけない役割があるからじゃないですか」と励ましてくれた。ここまで回復したのは奇跡だったようです。詳しいことはわからないが、基礎体力があったこと、生命力、それと運…。これは冗談でしょうが「梨田さんの人柄ですね」といわれ、初めて少しだけ笑うことができました。

-医師とも会話ができるまでになった時期ですね

梨田氏 ドクター、看護師さんも怖いと思うんです。でも腰が引けたり、いやがったりせず、ちゃんと向き合ってくれた。ドクターから「梨田さんが元気になったら、ぼくたちにとっても励みになりますから」といわれ、「よーしっ、頑張ろう」という気持ちになったものです。