ロッテが総力戦で勝った。延長10回、藤岡が14球粘った末に四球を選び、荻野が犠打を決めた。ここから井口監督はルーキー福田光、高卒3年目の安田、再び新人の佐藤と3連続で代打を送る。「必ず誰かしら決めてくれると信じてつぎこんだ。若手が1軍を底上げして、いい形でチームが動いている」。もうベンチに野手は残っていない。最後の1人が決めた。

9回無死満塁の絶好機で3者連続凡退。大抵流れは相手に傾く。それが今は「負けないだろう」という雰囲気が漂う。リリーフが強固だから接戦に持ち込めば自信がある。前日も逆転勝ちだった。のったら止められない。「逆転のロッテ」とか「下克上のロッテ」と言われてきた。

今年のチームにいわゆるミスター・ロッテ的なリーダーはいない。近年その役割を担った鈴木は楽天へ移籍。ムードメーカーの福田秀も骨折で離脱した。だが裏を返せば、全員が主役になれる。1球ごとにベンチから大きな声が響いた。

7連勝は4年ぶり。オリックスに6タテを食らわせれば7年ぶりの8連勝となる。その時のロッテも“雑草集団”だった。当時、伊東監督はこう言っていた。「スター選手がいないんだよね。でもそれでいい。全員で束になってかかる」。故障を抱えたベテランに代わり、育成から昇格したての西野ら若手が台頭した。今年で言えば和田がそのチャンスをつかんだ。

フレッシュマンの空気感も大きい。3月、福田光に開幕遅延について尋ねると「僕は通常の開幕を経験していない。だから、いつもと違う、困るみたいな感情はないです」と答えた。佐藤も「まだお客さんの中で試合したことがないので。これはこれで、精神的には楽とも考えられる」と無観客をマイナスに捉えない。

ロッテが無類の強さを発揮する時、開幕前の下馬評は高くないように思う。日本一になった05年のような勝利の方程式、マリンガン打線ではないかもしれない。それでも、失うもの、怖いものがないというのは強い。【鎌田良美】