近本とサンズからハイタッチを要求される。糸原には背中をさすられる。阪神大山悠輔内野手(25)は初めて走者3人から出迎えられ、思わず表情を緩ませた。プロ4年目で自身初の満塁弾。チーム全体を生き返らせる、価値ある先制アーチをかけた。

「昨日は昨日、今日は今日と、結果が良くても悪くても1日1日切り替えて臨んでいる。また新しい気持ちで打席に入りました」

前夜は甲子園で首位巨人に痛恨の惜敗。自身も4打数無安打で最後の打者となった。宿敵との本拠地カードに1勝2敗と負け越して、この日朝に横浜入り。食らったダメージを引きずらない術は、もう身につけていた。1回表1死満塁。浮足立ったDeNAルーキー左腕坂本の失投、外角高め146キロを見逃さない。逆らわず、それでいて強くたたき、右翼フェンスをギリギリでオーバーさせた。

「詰まりOK!」

それが合言葉だ。昨秋から熱心に指導を受け続ける新井打撃コーチとのイメージを体現できた。昨季までは前でさばく意識が強すぎたのか、変化球にバットが回る場面も少なくなかった。今季はミートポイントを捕手側にズラし、よりボールを引きつける打撃に改良中。「逆方向にいい打球が飛んでいるのはいいこと。そこは意識を持って取り組んでいる。それが今日の逆方向への打球につながったと思います」と納得した。

4点リードの3回2死一塁にも再びボールを引きつけた。真ん中スライダーを強引に引っ張らず、バックスクリーン左に2ランを運んだ。2打席連発は19年4月18日ヤクルト戦以来。自己最多をさらに更新する17号はチーム単独トップとなり、リーグ最多の巨人岡本にも2本差まで迫った。

現在、120試合シーズンでも30発ペース。85年の掛布(40本塁打)、岡田(35本塁打)以来となる生え抜き選手の30本塁打到達も現実味を帯びてきた。周囲からの期待値は高まるばかりだ。もちろん、痛い引き分けも次戦には引きずらない。一夜明ければ、2発6打点の勢いだけを加速させる。【佐井陽介】

▼大山が1回の満塁本塁打に続き、3回の第2打席に2ラン本塁打。これで17号となり、シーズン120試合換算で30号となるペースだ。直近の阪神の年間30本塁打は10年ブラゼルの47本塁打で、日本人では07年金本知憲の31本塁打。生え抜き選手に限ると、85年掛布雅之40本、岡田彰布35本以来となる。

▼満塁本塁打を含む1試合マルチ本塁打は、新井良太が13年7月24日ヤクルト戦で2ランと満塁本塁打を打って以来。満塁本塁打を起点に2打席連続本塁打となると、真弓明信が91年6月14日中日戦で満塁-ソロで記録して以来、29年ぶり。

▼大山の同一試合での2打席連続本塁打は、18年9月16日DeNA戦、19年4月18日ヤクルト戦に次ぎ3度目。

▼阪神は今季5本目の満塁本塁打。シーズン最多は77年の8本(ブリーデン3、片岡新之介2、掛布雅之、佐野仙好、田淵幸一各1)。今年はどこまで迫れるか。